日本ハイパーサーミア学会誌
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定常強磁場の生体への影響
池田 哲夫
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1994 年 10 巻 1 号 p. 58-64

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抄録

我々の研究グループでは, 1990年以来, ドジョウ (泥鰌) に強磁場を照射した場合の影響について, 実験を進めてきた. 実験に用いたドジョウは市販のいわゆるドジョウである. 最大磁場1.8T (テスラ) の定常磁場発生装置を用い, 小型の試験管 (内径13.5mm) に1匹ずつドジョウを入れ, 数時間の曝磁後, その影響がどのように残っているかの測定を行った. 対照群は実験を行ったのと同じ時間試験管の中に拘束し, 同一の温度, 照度に保たれている. 曝磁による影響は, ドジョウの心拍数の対照群との差に注目し, 測定を行った.
測定の結果, 対照群の心拍数の平均値は約26回/分であったのに対して, 影響が残っていると考えられる間の曝磁群の心拍数は21回/分となった. この心拍数の変化量は印加した磁場の強さ及び曝磁時間にはあまり影響を受けていない. 心拍数に影響を及ぼしている時間が, 磁場の強さ及び曝磁されている時間の関数となっている (1.5T, 8時間の曝磁では影響の残る時間は約16時間であるのに対して, 1.5T, 6時間の曝磁では約10時間影響が残った). また, 磁場が弱い場合, あるいは被曝時間が短い場合には影響は現れなかった (同じ1.5Tの磁場でも, 曝磁時間が4時間では, 心拍数は対照群との間に差異が認められなかった).
以上の実験結果より, 強い定常磁場中に生体が曝された場合には, 循環器系統に影響を及ぼしていると考えられる. この原因についての検討は行っていない.

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