日本ハイパーサーミア学会誌
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マウス骨髄中CFU-GMの温熱感受性及び温熱による放射線の増感作用
吉田 弘
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1994 年 10 巻 1 号 p. 65-77

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抄録

温熱療法時における骨髄機能への影響を調べるため, マウス骨髄幹細胞の一つであるGFU-GM (granulocyte-macrophage colony-forming units) の温熱感受及び放射線増感効果の有無について検討した.in vitro加温はマウス大腿骨から取り出した骨髄細胞を恒温槽で加温して行った.in vivo加温はマウス下半身を恒温槽に浸透して行った.放射線照射は骨髄細胞を遠心チューブ内で照射する (in vitro照射) か, もしくは全身照射 (in vivo照射) して行った.GFU-GMの生存率はメチルセルロース法によるコロニー形成数の比を用いた.その結果, 1) in vivo加温による温熱感受性のグラフは41.5℃から44.0℃の範囲において肩を持つ指数的減衰曲線となった.また, 各々の曲線における指数的減衰部の傾きから得られた Arrhenius curveは42.3℃に変曲点を示し, 不活性化エンタルピーは変曲点以下で 1836kJ/mole, 変曲点以上で704kJ/moleとなった.2) in vitro及びin vivoで放射線照射したマウス骨髄細胞をin vitroで42℃60分加温し, 非加温群の放射線感受性曲線と比較した場合, in vitro照射後in vitro加温を行った群では放射線照射から加温までの時間にかかわらず相乗効果が認められなかったが, in vitro照射後in vivo加温を行った群では相乗効果が認められ, 相乗効果比 (TER) は1.12であった.3)in vitro照射後, 42℃60分加温し, 非加温群との放射線感受性曲線を比較した場合にも相乗効果が認められ, TERは1.66であった.身体の広範囲にわたり放射線治療と温熱療法を併用する場合には, 相乗効果による骨髄機能の低下を生じ得る事が示された.また, 同様の内容の研究において, in vitroでの結果はin vivoでの結果と比較して相乗効果を低く見積もる可能性のあることが示唆された.

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