日本ハイパーサーミア学会誌
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全身性交流磁気刺激後のヒト血中セロトニン (5-HT) の低下と磁気の非熱効果について
山本 竜隆瀬戸 明日下 史章仲里 誠毅久光 正
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1997 年 13 巻 1 号 p. 28-36

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抄録

磁気・電磁気による生体非熱効果研究の一環として, 生体電磁加温能力をほとんど持たない交流磁気発生装置 (50Hz, 0.08T) を12個用い, ヒトを対象に全身性交流磁気刺激を施行し, 末梢血中セロトニン (5-HT) およびその代謝産物である5-ヒドロキシインドール酢酸 (5-HIAA) を測定した.実際にヒト体幹部に加わる磁気強度は, およそ0.5~7mT (5~70gauss) の範囲であった.1日30分間の曝射を3日間連続で行い, 採血はいずれも磁気刺激前, 磁気刺激30分後, および3日間の磁気刺激後の合計3回行った.また同時に腋下体温も測定した.全血5-HT (n-13) は30分間の磁気刺激後, 有意に低下し (p<0.05), さらに3日間の磁気刺激後では高度に低下した (p<0.001).一方血漿5-HIAA (n=6) は30分間の磁気刺激後では有意差はなかったが, 3日間の磁気刺激後では有意に上昇した (p<0.01).なお腋下体温の変化はみられなかった.この結果は超低周波の全身性交流磁気刺激が, 熱効果を介さずに血管作動物質の一つである5-HT系に影響を与えていることを示している.交流磁気による血中の5-HT低下作用は, おそらく大部分が胃腸管のエンテロクロマフィン細胞 (EC細胞) の5-HT合成の阻害か, または放出の抑制によるものと考えられる.交流磁気の非熱効果は現行のハイパーサーミアに有益に作用する可能性がある.

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