マイクロ波ハイパーサーミアにおいて局所選択加熱を実現するための磁性微粒子の開発を行った.磁性微粒子として, 酸化鉄 (III) 鉄 (II) 微粒子水分散液とゼラチン水溶液を混合することによりゼラチンで保護した酸化鉄 (III) 鉄 (II) 微粒子 (Gel-Mag微粒子) を調製した.このGel-Mag微粒子は生理食塩水中で安定に分散した.このGel-Mag微粒子の分散安定性, および酸化鉄 (III) 鉄 (II) 微粒子へ吸着するゼラチン量の測定を行い, ゼラチンの吸着量が増加すると, Gel-Mag微粒子の分散安定性が向上することが明らかとなった.
電気的に筋肉と等価な寒天ファントムモデルを貫通するポリ塩化ビニルチューブにGel-Mag微粒子分散液を流して, 外部よりこのチューブに直交する方向に直流磁場を与えた.その結果, ポリ塩化ビニルチューブの内壁にGel-Mag微粒子の堆積が認められた.また堆積したGel-Mag微粒子に対して直流磁場を印加した状態で周波数430MHz, 5Wのマイクロ波を, 電界振動方向が直流磁場の向きと等しくなるように5分間照射した.アプリケータの開口面から10mmの位置に堆積したGel-Mag微粒子が存在するときには, Gel-Mag微粒子が存在しないときに対して175%の温度上昇が見られた.この結果はGel-Mag微粒子におけるマイクロ波の吸収がファントムモデルの温度上昇を引きおこすことを示しており, Gel-Mag微粒子がマイクロ波加熱に対して有効な物質であることがわかった.
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