日本ハイパーサーミア学会誌
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高度肝虚血再灌流障害における虚血耐性の意義
櫻井 洋至野口 孝伊藤 偉織阪井田 麻祐子
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2003 年 19 巻 1 号 p. 31-42

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抄録

HSP70は虚血耐性の誘導に重要な役割を占めていることが報告されているが, その詳細なメカニズムは未だ明らかでない.本研究の目的はHSP70を誘導する効果を有するpreconditioningとgeranylgeranylacetone (GGA) の細胞保護効果について評価すると共にHSP70とシグナル伝達因子NF-κBの機能的関連からHSP70の細胞保護機序について検討することである.
対象と方法.ウィスター系雄性ラットを用い45分間の温阻血再灌流を行うI群, 45分温阻血再灌流に先行して30分の虚血再灌流をpreconditioningとして行うP群, 45分阻血再灌流の前に7日間GGA200mg/kg体重を経口投与するG群の3群を分類.検索項目は生存率, 肝機能 (ALT, ヒアルロン酸), 肝微小循環 (レーザードップラ法), 組織所見 (電顕), HSP70, NF-κχB発現 (ウェスタンブロット法), NF-κB DNA結合活性 (ゲルシフト法), 分離肝細胞培養液中NO-2+NO-3産生 (Griess法).
結果.I群の7日生存率は0%であるのに比し, P群では83%, G群では75%と有意に改善した.肝組織血流, 血清ALT値, ヒアルロン酸値や組織所見はI群において極めて不良であったのに比し, P, G群で有意に改善を示した.HSP70発現はI群に比しP, G群で有意に増強する一方, NF-Bの活性化ならびにNO産生はP, G群で抑制された.またP, G群では核内へ移行したNF-κBのDNA結合がI群に比し有意に抑制されていた.結語.PreconditioningやGGA投与によりHSP70が発現と共に虚血耐性が誘導された.その機序としてHSP70がNF-κBの活性化を抑制してiNOS発現に関連したNOの過剰産生を制御すると共に再灌流後6時間以内の内皮障害を軽減しeNOSによる微小循環を維持することが示唆された.

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