抄録
【目的】
骨盤骨折再建術後患者は退院時にも跛行が残存しているという報告は散見するが、骨盤骨折再建術後患者の歩行解析を行っている報告は見あたらない。そこで今回、骨盤骨折患者の歩行動作を解析し、検討を行ったのでここに報告する。
【対象】
当院で手術を行った骨盤輪骨折7例、寛骨臼骨折7例、全14症例を対象とした。男性13例、女性1例であり平均年齢は骨盤輪骨折43.5歳、寛骨臼骨折46.8歳であった。また、健常男性12例(平均年齢45.0歳)をコントロール群とした。対象者には、本研究の趣旨を説明し、同意を得た上で研究を行った。
【方法】
三次元動作解析装置VICON system 370 (Vicon Peak社製) 、床反力計(AMTI社製)4枚、カメラ(Vicon Peak社製)6台を用いて歩行解析を行った。25mmの赤外線反射マーカーを用い、VCM(Vicon Clinical Manager)プロトコールに従って、仙骨部(両上後腸骨棘を結んだ線の中点)・両側の上前腸骨棘・大腿外側下1/3・膝関節裂隙・下腿外側中央部・外果・第2中足骨頭の皮膚上をマーカー部位とした。歩行は裸足で自由歩行とした。解析にはVCMソフトを用い3群間の下肢関節角度及び関節モーメント、関節パワーを解析し、比較検討した。
【結果】
関節角度において、骨盤前後傾斜角は骨盤輪骨折、寛骨臼骨折両群でコントロール群に対して有意に後傾位であり、波形パターンが異なっていた。また、股関節屈曲角度の減少を認めた。寛骨臼骨折では股関節内転角度の減少が認められたが、膝関節、足関節では有意差は認められなかった。同様に、関節モーメントにおいて骨盤輪骨折、寛骨臼骨折両群で股関節外転モーメントの低下が認められた。関節パワーにおいて骨盤輪骨折、寛骨臼骨折両群で股関節屈曲・伸展・内転・外転における吸収・産出パワーピーク値の低下が認められた。
【考察】
本研究の結果より、骨盤輪骨折、寛骨臼骨折両群は歩行中骨盤後傾位であり正常な波形パターンを示していないこと、歩行中股関節屈曲角度の減少や関節モーメント、関節パワーの低下がみられたことから、本骨折に対する姿勢制御や筋力増強の理学療法の必要性が示唆された。