東海北陸理学療法学術大会誌
第23回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O055
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「外国人のための無料健康相談と検診会」における腰痛教室の効果と外国人の腰痛の現状
*前野 竜太郎
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キーワード: 腰痛教室, 外国人, 腰痛体操
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抄録

【目的】静岡県中部地域では,1997年より「外国人のための無料健康相談と検診会」を行ってきた.過去3年間,受診者の最も訴えの多い症状は腰痛であった.このため昨年度より,腰痛対策として(1)静岡県中部在住の外国人の腰痛の現状を明らかにし,(2)通訳を交えて母語による腰痛教室を行い,その効果について検討したので報告する. 【方法】「無料健康相談と検診会」の腰痛教室に参加した対象者に,母語に翻訳されたパンフレットを用いた腰痛体操指導や,日常生活動作の指導の効果について,また,腰痛と日常生活動作との関係,腰痛への対処方法,予防などについて,自己記入による質問紙調査を行った.【腰痛教室の方法】(1)個別に腰痛予防としての日常生活動作の指導を逐語訳にて説明しながら,(2)通訳による問診にて,腰痛の症状や部位,頻度などを確認した後,(3)個別に腰痛体操を処方した.(4)体操の内容は,ストレッチング,腹筋筋力強化,背筋筋力強化の3種類であり,各1種類,計3種類の体操を処方し,(5)通訳付でのPTの指導のもと個別に会場で実践してもらった. 【結果】〈1.基礎データ〉日時:2006年10月30日.会場:静岡厚生病院(静岡市).対象者:腰痛患者19人(男9人、女10人).国籍;ペルー6人,ブラジル5人が過半数を占めた.スペイン語,ブラジル(=ポルトガル)語で腰痛教室を受けたものが多かった.最も多かったのは30歳代,次いで40歳代であった.〈2.腰痛の現状〉「普段の生活で、どのような姿勢の時に、痛いか」→「中腰」9人,「寝ているとき」9人,「椅子に座っているとき」7人.「どのような作業の時に、痛みが増強するのか(複数回答)」→「立った姿勢での労働作業」15人,「重いものをもって運ぶ」10人.「痛くなった時の対処方法」→「安静にする」9人,「市販薬を使う」8人.「腰痛をおこさないために、日頃から、行っていることがあるか」→「特に何もしていない」7人,「運動をする」7人,「姿勢に気をつける」.また、BMI25以上の者は,8/19人であった.「腰痛になって、できなくなったことがある」8人.〈3.指導効果〉「腰痛体操は、役に立った」14人,「毎日の生活の中で腰痛体操はできる」16人,「今後、腰痛体操、生活の仕方等の指導が必要」14人. 【考察】(1) 腰痛は,作業時、非作業時ともに起こっており,腰痛時には,何らかの自己対処を行っている者が多いことがわかった.(2) 腰痛予防については,エクササイズなど軽い運動をする者が多い一方で,何も行わない者も多い. (3) 腰痛を抱える者の半数が肥満であったが,日頃から体重を増やさないように肥満対策をしている者は少ない. 【まとめ】(1) 母語を用いた逐語通訳による腰痛体操指導,日常生活指導パンフレットを用いて,通訳を交えて行った腰痛教室は効果があった. (2)腰痛体操は個別対応であり、チャートの作成など集団への対応が課題である.

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© 2007 東海北陸理学療法学術大会
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