東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P003
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足趾接地状況における年齢と足趾力の関係
-金沢市健康づくりフェアにおける調査を通じて-
*田原 岳治青木 美幸山口 美穂小川 雄亮石井 健太郎相馬 俊雄
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抄録

【はじめに】
石川県理学療法士会では,公益事業の一環として金沢市内で開催される健康フェアに特設ブースを出展している.この数年は,足趾の接地状況と運動機能との関係を調査している.臨床上,足趾の接地不良に遭遇する機会は多いにもかかわらず,足趾の接地圧不良と足趾力(第1趾と第2趾間の挟力)についての報告は少ない.今回,金沢市内で開催された『第29回健康づくりフェア』(以下,フェア)において,足趾(第1趾)の接地状況における年齢及び足趾力,他趾との関係を調査したので報告する.
【対象】
フェア来場者のうち,当ブースを訪れた高齢者194名(男性26名,女性168名,平均年齢65.5±12.0歳)の388足であった.対象者には,事前に調査研究の趣旨を説明し口頭で同意を得た.
【方法】
足趾接地状況と圧分布の計測は,ピドスコープ(WB-2000:株式会社ワミー製)を使用した.ピドスコープは,足趾の接地状況を,画像表示および印刷する機器である.足趾の接地条件は,開眼にて両足の内側を接触させ,努力して足趾すべてを接地させる閉脚立位とした.写真結果から,両側の第1趾の接地圧が良好な群(以下,良好群)と,第1趾が一側または両側において,接地圧が不良な群(以下,不良群)に分類した.足趾力の計測は,足趾力計測器(チェッカーくん:株式会社新企画出版社製)を使用した.解析は,2群における年齢と足趾力に対して,Pearsonの相関係数の検定を行った.また,2群における第1趾以外の接地圧不良の出現率に対して,対応のないt検定を行なった.それぞれ有意水準を5%とした.
【結果】
良好群は162名であり,年齢は67.1±9.8歳,足趾力は2.25±1.02kgであり,不良群は25名であり,年齢は64.8±9.5歳,足趾力は2.28±1.08kgであった.両群における年齢と足趾力との間に有意な相関は認められなかった.また,第1趾以外の接地圧不良の出現率では,良好群に比べて不良群で有意に高い値を示した(p<0.01).
【考察】
2群において,年齢と足趾力の間では有意な相関は認められなかった.足趾力は正常なアライメントでは,第1趾の内転筋力として表現される.しかし,外反母趾変形では,母指外転筋と長母趾屈筋(腱)の走行が変化する.これにより,足趾のアライメント異常が,単純に足趾の内転筋力の低下に直結しないと思われる.また,不良群では良好群に比べて,他の4趾の接地圧不良の出現率が有意に高い値を示した.これは,接地圧低下をもたらす前足部の巧緻性低下は,第1趾に限定されず,前足部全体のアライメントの変化に影響を及ぼしている可能性があると推察される.古川らは,高齢者を対象に,足趾の接地異常に伴う転倒リスク向上の可能性を指摘している.今回の結果から,今後は,足趾の接地状況と転倒リスクとの関係について明らかにしたいと考える.

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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