抄録
【はじめに】
金沢市で開催されている健康づくりフェアは,一般市民に対して医療や福祉に関する情報の提供や相談,身体機能の測定などを行い,健康に対する意識の向上を図ることを目的に行われている.その中で石川県理学療法士会では,足趾接地状況と身体機能の関係を調査している.そこで今回,『第29回健康づくりフェア』において,足趾の接地状況と閉眼片脚立位保持時間(以下,片脚時間)の関係を調査したので報告する.
【対象】
対象は,石川県理学療法士会の出展ブースに訪れた成人186名(男性26名,女性160名,平均年齢66.7±9.9歳)とし,事前に調査研究の趣旨を説明し同意を得た.
【方法】
対象者の静止立位の足趾接地状況と圧分布は,ピドスコープ(株式会社ワミー製WB-2000)使用し,立位時の足趾の接地状況を画像表示および印刷した.足趾の接地条件は,開眼にて両足の内側を接触させ,努力して足趾すべてを接地させる閉脚立位とした.写真結果から,両側の第1趾の接地圧が良好な群(以下,良好群)と,第1趾が一側または両側において,接地圧が不良な群(以下,不良群)に分類した.片脚時間は,合図と共に閉眼し,両手を腰にあて,片脚立位となった時点で計測を開始した.これを左右の下肢にて1回ずつ計測し,左右の値を平均した.解析は,2群における年齢と片脚時間に対してPearsonの相関係数の検定を行い,有意水準を5%とした.
【結果】
良好群は162名であり,年齢は67.1±9.8歳,片脚時間は13.1±43.8秒であり,不良群は25名であり,年齢は64.8±9.5歳,片脚時間は12.4±23.7秒であった.年齢と片脚時間において,良好群では,有意な相関は認められなかったが,不良群では,有意な負の相関(r=0.661,p<0.001)が認められた.
【考察】
良好群において,年齢と片脚時間との間に有意な相関は認められなかった.これは,足趾の接地状況以外の下肢筋力や平衡機能などの身体機能の影響が大きく関与しているためと考えられる.村田は,片足立ち位保持が良好な例では,大腿四頭筋などの下肢の主要な筋力よりも,足趾力及び足底の機能である足把持力や足底の二点識別覚の方が片足立ち位での重心動揺に影響を与えていると報告している.しかし今回の結果からは,年齢による身体のアライメントの変化や下肢筋力などの身体機能への影響の違いが,足趾の接地状況より片脚立位保持能力には重要であると推察される.また,不良群では年齢の増加に伴い,片脚時間が有意に減少することがわかった.これは,不良群は足趾接地が不良のため,片脚立位保持に重要な足趾把持力が低下していると予測される.したがって,それを下肢の筋力によって代償しているため,年齢の増加とともに片脚時間が低下したものと考えられる.