東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P055
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高校女子ハンドボールチームの足関節装具と片脚立位の評価
*渡邊 絵美石倉 作紀椎木 孝道齊藤 和快
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抄録

【はじめに】
足関節捻挫後の装具装着の目的は、傷害の予防・機能不全の代償など様々であり、スポーツ復帰の過程で使用される。装具を長期間にわたり装着することは、関節可動域制限や固有感覚の低下を起こし足部や他の下肢関節の障害に繋がる可能性があるとされている。
今回、高校ハンドボールチームの選手を対象に、足関節装具と足関節機能について検討、考察した。
【方法】
アンケート調査と開眼片脚立位時間の測定を行った。アンケートの内容はスポーツ傷害の有無と装具装着の有無、装具を装着することになった時期、きっかけ、目的、感想である。アンケートは複数回答可能とした。アンケート回答より、足関節捻挫の既往があり、現在も足関節装具を装着していると答えた者の開眼片脚立位時間を測定した。開眼片脚立位は文部科学省新体力テスト実施要項の開眼片足立ちテストに基づいて行った。
対象者には調査の主旨や目的を充分に説明し、同意を得た。
【結果】
過去のスポーツ傷害の部位は、上肢4件、足関節5件、下腿部3件、腰、股関節、膝関節、足部がそれぞれ1件であった。受傷後の装具装着は、足関節6件、腰1件、肘1件であった。現在のスポーツ傷害の部位は、膝関節、足関節、下腿部がそれぞれ3件、腰が2件であった。受傷後の装具装着は、腰1件、膝関節1件、足関節1件であった。
足関節装具装着は7件(6名7足)あり、全員が現在も装着していた。7件の診断名は全て足関節捻挫であり、初めて受傷した時期は小学校時代1名、中学校時代1名、高校時代4名であった。装具装着時期は全員が高校からであり、きっかけは病院の処方が1件、周囲の勧めが3件、再受傷に対する恐怖心や不安感が3件であった。
片脚立位保持時間(5名5足)は、装着側が33.0士5.6秒、非装着側が179.1士9.5秒であった。
【考察】
足関節捻挫の受傷時期にばらつきがあるのに対し、装具の装着時期は全員が高校からであった。きっかけとして周囲の勧めや再受傷に対する恐怖心や不安感と答えた者が多く、病院の処方と答えた者を上回っていた。小学校や中学校で受傷した者が、高校の部活動で練習量が増したことがきっかけで足関節に不安感を持つ様になり、周囲の勧めで装着する様になった可能性が考えられた。
片脚立位保持は、装着側と比較し非装着側は保持時間が短く、足関節の機能低下が考えられた。片脚立位保持時間の低下は、固有受容感覚の低下や下肢アライメントの不良、下肢の筋力低下などから起こることは知られている。
足関節装具を装着し競技へ完全復帰した選手は、装具装着の感想として、安心できる、固定されるから楽になるなど利点を挙げる一方で、動きにくい、蒸れるなど欠点を挙げることもあり、必ずしも好印象を抱いているというわけではないようだった。装具装着の目的として怪我の予防・安心感などをあげており、運動療法を用いて出来る限りそれらの問題点を解決することで、装具を外してプレーできるようになり、足関節の本来の機能を取り戻せるのではないかと考えた。

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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