東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P056
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地域のスポーツ活動における現状と課題
公益活動を通してのスポーツ現場での実態調査
*田中 哲成宮 久詞早川 省三
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抄録

【目的】最近理学療法士(以下PT)が院外活動として、地域のスポーツ現場でサポートといった公益活動をする機会が増えてきている。今回はPTがメディカルサポートとして公益活動をするにあたり、現場でのスポーツ活動の現状を把握し、地域のスポーツ活動に介入していくにあたり、どのような活動が望ましいかを検討してみた。今回は高校野球部でのメディカルサポート、中学ボーイズリーグの野球大会サポート、小学生のスポーツ指導者に対する講習会をとおして、年齢別によるスポーツ障害やその特性、対象者の要望のほか、PTが現場で活動する点でのさまざまな問題点等において若干の知見を得たので報告する。
【方法】対象は石川県内の高校野球部に対しメディカルサポートを行い、46名の選手からのアンケート調査を行った。また中学ボーイズリーグの地方大会においてメディカルサポートを実施し、参加PT26名からのアンケート調査を行った。スポーツ少年団に所属する監督、指導者に対して、小学生のスポーツ障害についての講習会を行い参加者38人からアンケート調査を行った。
【結果】野球部でのアンケートの結果より初めて痛くなった時期は小学生の時期が多く、初めて痛くなった部位は肘関節が最も多くみられた。現在痛めている部位も肘関節が多く、腰痛が次に多く見られた。痛みを伴う動作としては投球動作が最も多く、ダッシュ時の疼痛が次に多くみられた。痛みが出てきたときの対応としては「様子を見ながら続ける」が最も多く、「我慢して続ける」と合わせると過半数を超え「休む」「医療機関を受診する」を大きく上回った。小学生のスポーツ指導者に対する調査では、PTの認知度が低かったほか、PTの治療を受けた経験も少なく、障害に対しての認識が低いという結果が得られた。次にメディカルサポートを経験したPTからのアンケートでは、サポートを継続したい理由としては自身の勉強のためや、スポーツリハに興味がある等が多く、活動中に困ったこととしては、個別の相談に対しての対応や、指導に戸惑うといったものが挙げられた。
【考察】高校野球部の調査結果より、障害の発生年齢は小学生のころに発生したものが多く、特に肘関節、肩関節といった投球動作による障害が多くみられた。現在の障害部位としては腰部や下肢の疼痛が多く、以前故障した箇所の疼痛再発も多くみられた。また少年団の指導者に対しての調査からは、指導者が発育過程の障害についての認識が低い指導者もみられ、適切な指導や過度の関節への負荷が障害をきたすという認識が、青年選手のスポーツ障害を予防する上で大切なのではないかと考える。中学ボーイズ野球大会のメディカルサポートに関しては、PT自身が現場での活動に興味を持ってはいるが、障害に対しての知識や相談に対しての対応に自信が持てないという結果が得られた。今後はサポートする側の知識向上や、コミュニケーション能力向上等も課題になると思われる。

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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