東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P062
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大腿骨頚部内側骨折人工骨頭置換術後の歩行能力
クリニカルパスの検討
*大場 正則赤尾 健志寺林 恵美子水島 朝美城戸 恵美布上 隆之山上 亨箭原 康人
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抄録

【はじめに】当院では大腿骨頚部骨折患者の約7割の患者で地域連携クリニカルパス(以下パス)を使用し、術後2~3週間で転院している。入院時に患者家族へ歩行の目標設定の説明を十分行い、連携病院でのリハビリテーションの継続を円滑に進める必要がある。今回、受傷前の歩行能力及び入院時の認知症の程度から歩行予後を予測し、個々に応じたパスの作成の可能性について検討する。
【対象】2006年4月から2008年4月の間に大腿骨頚部内側骨折を受傷し人工骨頭置換術を施行した86名。男性16名、女性70名、平均年齢78.7歳とした。
【方法】入院時の認知症は痴呆性老人日常生活自立度判定基準を用いて、認知症なし群、認知症軽度群(以下軽度群)、認知症中等度群(以下中等度群)、認知症重度群(以下重度群)に分類した。歩行能力は自立歩行5点、みまもり歩行4点、歩行器歩行・伝い歩き3点、平行棒内歩行2点、車椅子1点に点数化した。各グループ内で受傷前歩行能力と当院退院時歩行能力、最終歩行能力を比較した。また、当院及び転院先での入院期間を比較した。
【結果】認知症なし群は屋外歩行26名、屋内歩行8名、歩行介助1名、平均年齢73.9歳。軽度群は屋外歩行10名、屋内歩行6名、介助歩行3名、平均年齢80.7歳。中等度群は屋外歩行4名、屋内歩行7名、歩行介助4名、車椅子1名、平均年齢81.7歳。重度群は屋外歩行1名、屋内歩行1名、歩行介助10名、車椅子4名、平均年齢83.3歳であった。
歩行能力の平均値は、認知症なし群は受傷前歩行能力:4.63、当院退院時歩行能力:4.23、最終歩行能力:4.57。軽度群は4.39→3.94→4.44。中等度群は3.60→3.40→3.40。重度群は2.56→2.00→2.06であった。
当院での術後入院期間は、認知症なし群で21.2日、軽度群で20.6日、中等度群で22.7日、重度群で18.7日であった。転院先入院期間は、認知症なし群で46.2日、軽度群で65.3日、中等度群で41.2日、重度群で66.5日であった。
【まとめ】認知症なし群・軽度群は受傷前の歩行能力まで改善するが、軽度群では認知症なし群に比べ約20日多く日数が掛かる。これに対し、中等度群・重度群いずれも最終歩行能力はワンランク低下しており、当院退院時歩行能力と最終歩行能力では有意差がない。これは、指示理解の問題や転倒・転落のリスクにより医療者側からの行動抑制もあり実用歩行は困難な為と考える。また、重度群で転院先の入院日数が長期化するのは、自宅退院が少なく、次の施設の入所待ちが影響していると考える。以上より、認知症なし群及び軽度群ではパスの最終歩行能力と目標日数の設定が可能であり、中度群・重度群は予め最終歩行目標を低めに設定ができ、転院先での入院期間の短縮につながると思われる。

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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