東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P063
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人工股関節全置換術患者における歩行能力の推移の検討
*小林 理恵新屋 順子土屋 忠大平野 絢美藤原 善裕中山 禎司岩瀬 敏樹増井 徹男
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抄録

【はじめに】人工股関節全置換術(THA)の適応となる変形性股関節症患者はADL障害を有していることが多い.その障害の主な原因は疼痛や関節可動域制限による歩行能力の低下である.今回,THA施行患者の術前術後の歩行能力推移を把握する目的でTime up and go test(TUG)と10m歩行時間を経時的に計測したので報告する.【対象】対象は2008年1-4月にTHAを施行した変形股関節症患者25例のうち,患者の同意が得られ,術前・退院前・退院後の3回TUGによる歩行能力評価が可能であった12例 (男性2例,女性10例) とした.手術時平均年齢は60.5±8.2歳 (50-75歳)であった.対側股関節の状態は正常8例,人工股関節2例,変形性股関節症2例であった.手術は全例小切開後方アプローチで行い術翌日から全荷重歩行訓練を開始した. 【方法】T杖歩行開始までの術後日数と在院日数を調査した.術前の日整会股関節機能点数 (JOAスコア)と術前後の脚長差,術前・術後2-3週のT杖歩行自立後退院直前・術後2ヶ月時の外来受診時にTUGと10m歩行時間を計測し評価した. 【結果】T字杖歩行開始は術後平均6.6±3.7日,平均在院日数は21.0±4.9日であった.術前の平均JOAスコアは術側50.2±15.4点,非術側75.6±12.9点であった.平均脚長差は術前1.1±0.8cm,術後0.4±0.4cmであった.平均TUGは術前11.8±5.2秒,退院直前9.3±2.2秒,術後2ヶ月時7.6±2.1秒であった.平均10m歩行時間は術前12.2±5.3秒,退院直前10.0±2.4秒,術後2ヶ月時8.2±2.2秒であった. 【考察】TUGは運動器不安定症を定義する手段の一つであり,椅子での立ち上がり・座りや方向転換といったADLに関わる様々な複合動作が含まれている.今回,術前に比べTUGや10m歩行時間の平均値は入院中から改善が認められた.これより10m歩行でみることができる直線歩行に加え,TUGに含まれる複合動作も入院中から改善することがわかった.また,退院直前の平均値に比べ、術後2ヶ月時ではより改善がみられている.これは複合動作や歩行のスピード・耐久性は退院後の経過によりさらに回復をみせることがわかった.そのため,退院後の過ごし方がより歩行能力やADL能力の回復をはかるものとして,退院時指導の重要性を再認識した.入院中に禁忌肢位・動作に加え,可能な肢位・動作を習得するとともに,個々の運動能力や在宅環境にあわせた運動プログラムを提示し,運動習慣の継続を促す指導を行う必要があると考えた.

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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