東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P067
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外傷による下腿三頭筋断裂受傷後,筋壊死をきたした一症例
*田口 裕介井舟 正秀諏訪 勝志藤井 亮嗣田中 秀明川北 慎一郎
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キーワード: 下腿三頭筋, 筋断裂, 筋壊死
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抄録

【はじめに】
腓腹筋の部分断裂に対し縫合を行った場合は8週間で修復し,筋損傷が強い場合や血流障害を伴う場合は瘢痕治癒になると報告されているが,筋断裂後,筋壊死を繰り返した症例の理学療法の報告は少なく,予後予測が困難である.今回我々は,フ゛ルト゛ーサ゛ーに巻き込まれ,下腿三頭筋断裂を受傷し感染・血流障害から筋壊死に至り,筋除去を繰り返し,瘢痕治癒後にMMTが足関節底屈5に改善し,職場復帰・趣味活動可能となった症例を経験したので報告する.尚,本発表の趣旨及び目的を本人に説明した上で同意を得た.
【症例紹介】
男性,30歳台前半.職業:重機オヘ゜レーター.趣味:よさこい,獅子舞.診断名:右下腿三頭筋断裂,下腿坐滅創.
【経過】
フ゛ルト゛ーサ゛ーに巻き込まれ右下腿三頭筋断裂,受傷部汚染があり,テ゛フ゛リート゛マン・筋縫合術を施行.術後4週から理学療法を開始.術創部周辺に軽度の安静時痛,中等度の伸張時痛があり,MMTは右足関節背屈・底屈・外反・内反1,右足趾伸展・屈曲2,右膝関節伸展2,屈曲3.ROM は右足関節背屈-20°,底屈30°,右膝関節伸展-20°.術後5週に血行状態悪く,筋縫合部に壊死が生じ,壊死筋の除去・テ゛フ゛リート゛マンを施行.縫合部が除去されたが,術後6週で全荷重を開始.ROMは右膝関節伸展-15°,右足関節背屈-20°で,MMTは右足関節底屈2-であったため跛行を認めたが,靴ヒール部の補高により独歩可能.その後,安静時痛はほぼ消失し,日常生活は自立していたが,術後9週後に新たな筋壊死,皮膚穿孔が生じ,再度筋除去・テ゛フ゛リート゛マンが施行され,皮膚を広範囲に切除し,皮膚開放.術後10週でROMは右足関節背屈10°に改善しランニンク゛を開始,12週後より全力走行が可能.術後13週でMMT右足関節底屈3,開放部の肉芽形成が良好となり植皮術を施行.植皮部分の修復後,超音波,マッサーシ゛を行い,術後17週でMMT右足関節底屈4,ROMは右膝関節伸展0°,右足関節背屈10°.術後20週でMMTは右足関節底屈5になり,退院.術後24週で職場復帰し,よさこいや獅子舞などの活動も可能となった.
【考察】
本症例は受傷部の汚染と筋の損傷がひどく,筋断裂部の縫合を受けたが,感染・血行障害により筋除去が繰り返されたことにより,筋,皮膚に欠損が多く,血行障害や残存した組織への過剰なストレスにより,疼痛・組織の柔軟性低下が生じていた.これに対して,超音波,マッサーシ゛を行い,疼痛軽減・組織の部分的伸張性増大を図った上で,持続的伸張,筋力増強運動を行なった.筋力増強運動の負荷量としては運動前後,翌日の筋痛・筋疲労度を毎日確認し,運動後は炎症等防ぐためにアイシンク゛を行い,過負荷とならないように気を付けた.残存した腓腹筋がヒラメ筋に癒着し,ヒラメ筋と同時に収縮可能となったため,全荷重・積極的な筋力増強運動が可能となり,MMTが足関節底屈5に改善し,活動性が向上したと考えられる.

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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