東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P086
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地域在住健常者の健康寿命延伸についての検討
~筋量・基礎代謝量・パフォーマンステストの観点から~
*倉知 真一森岡 繁太郎
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キーワード: 健康寿命, 筋量, 基礎代謝量
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抄録

【はじめに】
 現在、我が国の高齢者人口比率は約22%であり、その平均寿命と健康寿命は世界最高水準である。しかし、加齢に伴い脳血管障害や骨折等をきっかけとして寝たきりになることも少なくない。このようなイベントを予防し健康寿命を延ばすことは、深刻さを増す高齢化社会で極めて大切であると思われる。そのためには高齢者特有の身体機能や体組成を知る必要がある。これまでは、高齢者のパフォーマンスレベルの検討が多く、健康寿命延伸に関連すると思われる体組成について検討した報告は少ない。今回、体組成とパフォーマンステストを併せて測定し、その特徴について検討したので報告する。
【方法】
 対象は神経学的に運動制限のない50歳以上の女性60名(平均年齢65±6.3歳、Barthel Index100点)とした。65歳以上の33名を「高齢者群」、65歳未満の27名を「中高年群」と分類した。マルチ周波数体組成計MC-190:TANITAを使用し、体重、体脂肪量、上肢・体幹・下肢の筋量、基礎代謝量を算出した。パフォーマンステストとして30秒間椅子起立テスト、Timed Up&Go Test、Functional Reach Testの評価も行った。高齢者群と中高年群の2群間での各測定項目の比較と、各測定項目間の相関を算出し、その特徴を検討した。データ処理はt検定と回帰分析を行い、有意水準を95%とした。
【結果と考察】
 高齢者群では中高年群に比べ筋量の中で下肢のみが選択的に有意に低値を示した。この事は、高齢者で立位機会が減少している「不活動」と、速筋線維を中心として量的な低下が生じる「サルコペニア」の両者の病態が影響していると考えられる。
 高齢者群ではパフォーマンステストの全ての項目が有意に低値を示し、従来からの転倒予防教室等での報告と同様の結果が得られた。これらは下肢筋量低下が重要な転倒要因であることを示唆している。本結果からは下肢筋量と各テストの相関は強いと言い難いため断定できないが、高齢になるにつれて下肢筋量減少しそれがパフォーマンスレベルの低下をきたし健康寿命を短縮している可能性が高い。
 基礎代謝量は各部位の筋量と強い相関を示している。筋の基礎代謝消費量が全身の中で最も大きいことが確認できる。本研究での年齢群間に有意差が生じなかったが、筋量低下は基礎代謝量を低下させメタボリック症候群や生活習慣病のリスクを高めるため、健康寿命を短縮している可能性がある。加齢に伴う筋量低下や基礎代謝量低下を予防することが健康寿命の延伸に寄与すると考えられる。
【まとめ】
 高齢になるにつれて特徴的な変化が現れた。地域での健康づくりやメディカルフィットネス等で、より早期からPTが介入していく必要性が増してくると思われる。

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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