抄録
【目的】
愛知県西三河地区岡崎医療圏では2008年11月より“脳卒中地域連携パスby scone”(以下、脳卒中パス)を運用している。運用を開始して2年が経過した。計画管理病院である当院は脳卒中パスのデータを回収し、その分析を行っている。そこで今回2009年1年間に適用になった全データをまとめ、当医療圏における脳卒中医療の最終結果を報告する。また、脳卒中パス適用患者のリハビリテーション(以下、リハビリ)結果について脳梗塞と脳出血に分け比較検討した。
【方法】
脳卒中パスの電子的データをもとに2009年に適用した187名のデータを分析した。リハビリ項目である脳卒中機能障害評価表(以下、SIAS)と機能的自立度評価表(以下、FIM)の結果を集計した。加えて、全データを脳梗塞と脳出血の各データに分け詳細に分析し比較検討を行った。また、当医療圏でのリハビリ医療の質の検討として回復期病棟入院期間におけるFIM効率を算出し全国平均と比較検討した。
【結果】
2009年の1年で急性期病院を退院した脳卒中患者の内187名(適用率34.2%)に脳卒中パスが適用された。適用症例187名中バリアンスは22例(発生率11.8%)であった。バリアンスを除いた165例では平均在院日数:脳梗塞 急性期病院31.1日 回復期病院87.1日 脳出血 急性期病院32.5日 回復期病院101.2日であった。SIAS合計点の平均値:脳梗塞 急性期入院時48.8 転院時51.9 回復期退院時58.9 脳出血は同時期で40.2→46.4→55.1へと両者とも有意に改善した(p<0.05)。脳梗塞と脳出血間の比較では急性期開始時のみ有意な差がみられた(p<0.05)。FIM合計点の平均値:脳梗塞 転院時75.8 回復期退院時91.7 脳出血では同時期で69.1→94.6へと有意に改善した(p<0.01)。脳梗塞と脳出血の比較では各時期ともに有意な差はなかった。FIM効率は脳梗塞0.19 脳出血 0.26 脳卒中全体 0.20であった。発症からリハビリ開始までの日数は平均で脳梗塞3.13日、脳出血4.37日であり有意に脳出血の方が長かった。アウトカムとして発症前在宅率98.2%に対し、回復期病院退院後転帰では自宅復帰率83.6%であった。
【考察】
脳卒中パスを使用することで医療圏内での患者の症状の変化、在院日数、アウトカムとしての最終転帰が明確になった。また、共通したリハビリの評価が可能になり個々の症例の神経症状の改善とADL能力の推移が客観的に評価可能となった。今回の結果から脳梗塞も脳出血もリハビリ経過とともに神経症状とADL能力は有意に改善した。積極的なリハビリが患者の機能改善に寄与したことがうかがえる。その結果、退院後の在宅復帰率が83.6%と好結果になった。当医療圏における脳卒中パス適用患者の回復期病棟入院中のFIM効率は平均で2.0点であった。回復期リハビリテーション病棟協議会の示す全国平均は約0.18点であり当医療圏におけるリハビリの質は良好であったことが示唆された。脳梗塞と脳出血の病態間の比較では、急性期病院での発症からリハビリテーション開始までの日数が脳出血の方が約1.2日有意に長かった。加えて、急性期病院でのリハビリ開始時のSIASの合計点は脳出血で有意に低い値を示し急性期入院期間中継続していた。これは急性病態において特に血圧の管理に重点が置かれ安静臥床、投薬管理の必要性が生じたためと考えられる。また、神経症状の低下が有意に出現していることから発症直後の病態の不安定さが脳梗塞に比べ大きいのではないかと考えた。今回の結果から脳出血は在院日数が長くなるものの回復期退院時には脳梗塞患者と同等なADL能力を獲得出来た。したがって脳出血患者の急性期リハビリ中のリスク管理は非常に重要であり且つこの時期に起こり得る廃用症状の予防に配慮していけば十分に機能改善が得られることが示された。在宅復帰率向上のためには、急性期から症状に即したリハビリを立案し、質的、時間的に切れ目のないリハ連携の向上を目指していく必要がある。
【まとめ】
“脳卒中地域連携パスby scone”運用1年間の結果をまとめた。
脳卒中パスを使用することにより医療圏内で共通した尺度での評価が可能になり、患者の病態の変化が客観的に示された。今回脳出血患者の病態の推移が明らかになり、急性期リハビリでのリスク管理の重要性と回復期病棟での積極的なリハビリがADL能力の獲得に有用であることが示唆された。