抄録
【目的】厚生労働省は平成13年の職業能力開発促進法の改正を契機として、キャリア・コンサルティングを取り上げるようになった。基本的な考え方は労働者が自律的にキャリアを築くことができるよう援助することにある。理学療法士の質の低下が懸念され、学内教育から卒後のキャリア形成に向けた支援は養成校の課題となっている。本校では平成22年度、就職活動および卒業後の職業教育支援のためキャリアサポートセンター(以下、CSC)および卒後教育プロジェクトを開始したので報告する。
【方法】本学は4年制の理学療法士養成校である。CSCは教員と事務職員で構成する委員4名が実務にあたっている。まず、3年生後期より社会人基礎力評価としてのコンピテンシー診断の実施、4年生を対象とした就職ガイダンスを開催している。卒後教育プロジェクトは委員長と理学療法士で構成される委員9名(教育機関3名・同窓会4名・医療福祉施設2名)が実務を担当する。産学連携型教育フォーラム、知識・技術のフォローアップのためのブラッシュアップセミナー、育成プログラム共同開発のためのネットワーク形成が主な活動内容である。今回の発表に際して、本学の委員会の承認を得た。
【結果】CSCの取り組みに関しては、9月に3年生対象にコンピテンシー診断を予定し、学生および臨床実習指導者に対して社会人基礎力の情報提供を通じ臨床実習教育の手掛かりとする。今年度実施した就職ガイダンスは就職活動の心構えや求人票の見方などの説明を行う就職活動講座、系列校ビジネスデザイン学部の教授によるビジネスマナーとホスピタリティー講座(6月)である。また、入職に向けた準備として県内理学療法士と卒業生を招いた業界研究(11月)、研究授業発表会(平成24年3月)を予定している。これらのガイダンスについては、CSCで作成した就職ガイドブックに基づき進行する。このガイドブックは自己分析から就職内定後の礼状の書き方まで、考え方、手続き、マナー等必要と思われる内容を時系列に沿って、レッスン方式で読み進められるよう配慮している。
本校は第1期卒業生を中心に卒後勉強会等を企画してきたが、参加人数の減少に伴い縮小傾向となっていた。また、就職先の勤務体系や経済的理由もあり、研修に参加しにくい現状であることもわかった。そこで、同門会役員と学校組織および近隣の医療福祉施設に勤務する理学療法士と連携し、卒後教育プロジェクトが発足した。教育フォーラムは基調講演とパネルディスカッションを企画し、33名が参加した。内容も好評で、実施後のアンケートでは参加者のうち51.9%が次回も参加を希望し、48.1%は都合がつけば参加したいと回答した。ブラッシュアップセミナーの内容は卒業生で組織される同門会の意向を反映したテーマであり、症例検討会と理論・実技セミナーで構成した。第一回の参加者は36名であった。
【考察】中央教育審議会では、学校から社会・職業への移行が円滑に行われず、社会的・職業的自立に向けて様々な課題がみられると述べられている。日本理学療法士協会では生涯学習システムは経験年数と興味に応じ、3段階に分類され実施されているが、理学療法士の急増に伴い、資質・能力・取り組む姿勢に格差が生じている。昨今は社会全体を通じた構造的問題が存在し、徐々に社会の認識が厳しくなる傾向がある。実践的な職業教育に加え、社会的・職業的自立に必要な能力や態度を伸長・深化させることは体系的な教育の展開には重要なことである。それまで「消費者」の立場から、就職を期に「サービス提供者」へと立場が変換する事に対応していくためには、多角的な視点を持って学生の成長を評価し、多様な側面から医療従事者を育てていく手法が要求される。また、養成校は長きにわたり、卒業生を支援する機能を充実させることが必要である。いわゆる「ゆとり世代」を社会に送り出すにあたって、学内教育から卒後教育への一貫した支援体制を構築していくことが、卒業生のキャリアを支えるとともに、理学療法サービスの質の向上に寄与するものと考える。
今後の課題として、第三者評価や卒業生の満足度調査や静岡県理学療法士会や同県の理学療法士養成校や卒後就職先の理学療法士職員との連携があげられる。これら育成プログラム共同開発のためのネットワーク形成が充実することを目標としたい。
【まとめ】平成22年度より、学内教育から卒後のキャリア形成に向けた支援に向けCSCと卒後教育プロジェクトを開始した。学内教育ではより早期から十分な職業理解と目的意識を持たせ、就職活動から卒後教育への体系化されたシステムを構築していく必要がある。