東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-58
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肺結核後に閉塞性動脈硬化症により右下腿切断を行った症例
*相本 啓太上村 晃寛
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抄録
【症例紹介】 60歳代男性。平成22年3月、外出後動けなくなり、翌日に市内病院受診し、入院。ガフキー9号PCR陽性のため肺結核治療目的で感染症病棟へ転棟。抗結核治療(INH、RFP、PZA、EB)を開始。同日、急性呼吸不全のため挿管・人工呼吸器管理。平成22年8月上旬に理学療法開始し、8月中旬に人工呼吸器からの離脱訓練開始。8月下旬に3週連続ガフキー0号となる。9月中旬に閉塞性動脈硬化症のため右下腿切断術施行。10月中旬に当院回復期病棟へ転院。
【転院時評価】 身長160㎝、体重29.8㎏、BMI11.6。会話中に息切れが生じており(MRC Grade5)、著明な浅頻呼吸を認めた。鼻腔カニューレにて病棟では0.3L、理学療法時は1Lの酸素吸入。SpO2は安静時95%、運動時87%。筋力は上下肢MMTで3~4レベル。ROMは頚部・体幹に著明な制限あり、胸郭可動性にも制限がみられた。FIMは91点で、歩行は酸素吸入1Lで平行棒内監視にて行い、2往復でSpO2が87%となり、継続困難であった。Hb値は12.6 g/dLであった。
【経過】 運動耐容能、呼吸困難感の改善を目的として、義足完成までは呼吸指導、可動域練習、筋力増強運動を中心に実施。10月下旬に病棟での酸素吸入offとなり、理学療法時の酸素吸入を1Lから適宜調整開始。11月中旬には酸素吸入offで平行棒内歩行6往復が可能となった。11月下旬に下腿義足が完成し、歩行練習を中心に先述のプログラムを併せて実施した。義足歩行練習開始後7日で理学療法時の酸素吸入offとなり、監視でT字杖100m歩行可能となった。平成23年1月下旬にはT字杖にて500m(約10分)歩行可能となった。2月上旬のHb値は14.3 g/dLであった。
【最終評価(3月中旬)】 体重34.9㎏。会話中の息切れなし。呼吸数毎分15回。SpO2は安静時90%台前半、運動時は80%台。筋力は上下肢MMT4レベル。頚部・体幹のROMはやや改善が見られたが、胸郭可動性には変化なし。歩行は屋外独歩にて平均500m(約10分)可能となった(MRC Grade3)。FIMは123点。平成23年3月中旬に退院。
【考察】 本症例における最大の運動制限因子は、胸郭可動性の低下による肺胞低換気と考えられたが、理学療法施行前後における胸郭可動性の変化はなく、呼吸機能の改善による呼吸困難感の軽減の可能性は乏しいことが推察された。一方で体重が約5㎏増加したことから栄養状態や筋力増強運動、歩行練習などにより末梢骨格筋増大と酸素抽出能の増大、更にはHb値の改善から酸素輸送能の改善が考えられた。これらが本症例の呼吸困難感の減少につながり、運動耐容能増大に寄与した可能性が最も高いと考えられた。また、義足処方後7日で100mT字杖歩行可能となった。義足歩行が松葉杖歩行と比較し、酸素消費量が小さい(Waters et al, 1976)ことから本症例においても酸素消費量が減少した可能性が考えられた。義足歩行は練習過程で、酸素消費量が徐々に減少していく(長倉ら、2000)ことも歩行距離が延長した要因と考えられた。
【まとめ】 肺結核により人工呼吸器管理下で約5ヶ月の臥床後、右下腿切断を行った患者に義足を製作し、500m独歩可能となった。運動耐容能改善要因としては末梢骨格筋増大、Hb値改善、義足歩行による酸素消費量減少が考えられた。
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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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