東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-80
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肩こりのある若年成人女性における頚部および上部体幹筋群の筋硬度比の特徴
*古屋 久美澤 孝大朗樋口 雅之高橋 佑香北村 健矢倉 千昭
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キーワード: 肩こり, 筋硬度, 自覚症状
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抄録

【目的】 厚生労働省の平成22年国民生活基礎調査の概況によると、肩こりは現代の女性に多い有訴症状である。しかし、肩こりの定義は曖昧で明確ではない。また、肩こりに関する先行研究では、体幹後面部の筋と筋硬度の関係性について記載されているものがほとんどである。
 そこで本研究では、若年成人女性の肩こりについて、肩こりの自覚症状の有無で群分けし、利き手側および非利き手側での体幹前面筋を含めた筋硬度の関係性を明らかにすることを目的とした。
【方法】 対象は書面および口頭にて説明し、同意を得た30名の若年成人女性(平均年齢は21.4±0.7歳、BMI20.2±1.8)とした。
 被験者30名を質問紙を用い肩こり有群および無群に群分けし、頚部および上部体幹の前面筋群と後面筋群の筋硬度の測定を行った。筋硬度計はPEK-1(井元製作所)を用い、背臥位にて大胸筋、胸鎖乳突筋、腹臥位にて僧帽筋上部線維、肩甲挙筋、頚部伸展筋群の測定を実施した。測定肢位の基準は耳垂-肩峰-大転子-膝関節前部-外果前方が一直線になるように調整し、測定を行った。各筋群の測定は3回行い、その平均値を算出し、筋硬度比を算出した。筋硬度比の算出方法は、山口らの報告を参考に、対象筋筋硬度比=対象筋筋硬度/(非利き手側上腕二頭筋筋硬度+非利き手側上腕三頭筋筋硬度)/2で行った。
 統計処理は、肩こり有群と肩こり無群における測定筋群の比較を、対応のないt検定を行い、危険率5%未満を有意とした。
【結果】 本研究の質問紙調査の結果、肩こり有群が18名、肩こり無群が12名であり、統計処理の結果、年齢、身長、体重では、両群間に有意差はみられなかった。
 頚部および上部体幹筋群の筋硬度比の結果、肩こり有群の非利き手側の胸鎖乳突筋の筋硬度比が、肩こり無群と比べ有意に高い値(p<0.05)を示した。その他の筋硬度比に有意な差を認めなかった。
【考察】 胸鎖乳突筋は、頸椎の屈曲の際、後頭下筋や舌骨上下筋の収縮とともに頸椎の前弯角度を軽減しながら頸椎を屈曲させ、頭部を前方突出するときは、僧帽筋上部線維と共同して頸椎の屈曲および頸椎前弯を増強して、頭部および頸椎を伸展させる。このことから、胸鎖乳突筋は、頸椎の屈曲および伸展に関与する筋であり、僧帽筋上部線維や肩甲挙筋と同様に頭部の安定筋として作用するため、有意に高くなったのではないかと推測される。したがって、肩こりの評価および治療には、後方の筋群だけでなく、胸鎖乳突筋などの前方の筋群も考慮する必要があると考えられる。
【まとめ】 本研究では、肩こりのある若年成人女性における頚部および上部体幹筋群の筋硬度比の特徴について調査した。肩こりに関する先行研究では、体幹後面部の筋と筋硬度の関係性について記載されているものが多かったが、本研究の結果、非利き手側の胸鎖乳突筋の筋硬度比が高い値を示した。
 したがって、肩こりの評価および治療には、後方の筋群だけでなく、胸鎖乳突筋などの前方の筋群も考慮する必要があると考えられる。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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