東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-79
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交感神経の反応性の違いが前脛骨筋疲労後の筋血流に及ぼす影響 ―pilot study―
*齊藤 誠西田 裕介
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キーワード: 疲労, 交感神経, 筋線維Type
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抄録

【目的】 腰痛症患者の脊柱起立筋は筋血流低下が生じることが報告されている。本研究では筋の弛緩に作用するSR-Ca2+ATPase(以下、ATPase)に着目し、ATPase活性が低下している状態を筋の弛緩不全と定義し、筋血流低下を呈する要因の1つと考えた。ATPase活性低下は疲労に伴う活性酸素種(以下、ROS)やH+によって生じ、筋線維Type2の方がType1と比較して回復が遅延することから、本研究においては前脛骨筋疲労後の生体反応はヒラメ筋疲労後と比較して交感神経活動退縮の遅延および筋血流の低下が生じると仮説を立てた。仮説を検証する過程において、前脛骨筋疲労後に筋血流低下を示す被験者と示さない被験者が存在した。以上より本研究の目的は、筋血流の反応が異なる2名の症例検討を行うことで筋血流低下をきたす要因の1つとして筋の弛緩不全に加えて、交感神経の反応性の違いを示唆することである。
【方法】 対象は健常成人男性2名とした。対象者には研究内容について十分に説明し同意を得た。プロトコルは安静5分の後、Type1線維の多いヒラメ筋、Type2線維の多い前脛骨筋が主動作筋である足関節底・背屈の等尺性収縮運動を実施し、運動直後より回復期間として30分間設定した。安静時より経時的に心電図および近赤外線分光法により筋血流を測定した。なお50%MVCの筋出力が維持できなくなった時点を最大疲労と定義した。心電図より心拍変動解析にて算出したLF/HF成分は交感神経活動を表す指標として、近赤外線分光法より測定したTotal Hbは筋血流量を表す指標とした。
【結果】 LF/HFは被験者1において前脛骨筋疲労後の値がヒラメ筋および安静時と比較して高値を示す傾向にあったものの、被験者2においては、前脛骨筋疲労後の値はヒラメ筋および安静時と比較して変化が認められないか低値を示した。Total Hbにおいては、被験者1においては前脛骨筋疲労後およびヒラメ筋疲労後ともに著明な変化を示さなかった。被験者2においてはヒラメ筋疲労後には著明な変化を示さなかったものの、前脛骨筋疲労後の値が低値を示した。
【考察】 結果より交感神経の反応性が低いことは弛緩不全によって筋血流が低下する要因の1つであることが示唆された。交感神経の反応性が低い理由として安静時の交感神経活動が高いこと、筋血流が比較的低下していることが示唆される。解糖系代謝の最終分解酵素であるGAPDHは虚血、低酸素に伴うROSにより障害されることからATPase活性低下によりGAPDHが障害された可能性が考えられる。GAPDHが障害されることで血管拡張を阻害することが報告されているため、本研究において交感神経の反応性が低い被験者2の前脛骨筋運動後のみに筋血流の低下が生じたと考えられる。
【まとめ】 本研究の結果より、筋線維Typeの違いによってATPase活性低下に伴う筋血流の低下に変化が生じるとした仮説は否定された。筋線維Typeの違いはATPase活性低下に伴う筋血流低下の必要条件である可能性は示唆されたものの、十分条件ではないと考えられる。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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