東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-83
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超音波診断装置を用いたシンスプリント症例の後脛骨筋の特徴について
*藤田 翔平安倍 浩之小林 裕和下 嘉幸福山 支伸岡田 英治森下 真樹赤尾 知美清本 浩子冨田 一馬
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抄録

【目的】 後脛骨筋は下腿深部コンパートメントに位置し、シンスプリントに代表される下腿遠位部の痛み等に大きく関与していると考えられている。触診では、その硬度や痛みの評価は行えるが、筋萎縮などの影響を受ける筋厚を評価することが困難である。したがって、超音波診断装置(以下エコー)を用いて、非侵襲で後脛骨筋の状態を正確に評価することは意義深いと考える。
 今回、高校女子バスケットボール選手の後脛骨筋の状態を把握する為に、エコーを用いて筋厚を測定し、興味深い知見が得られたので、若干の考察を加え報告する。
【対象と方法】 対象は県内某高校の女子バスケットボール部員19名(バスケットボール経験期間4.87年±2.65年)軸足19肢とした。19名の内、シンスプリントと診断されたのは4名(以下シンスプリント群)で、整形外科的疾病などを有さない選手(以下正常足群)15名であった。測定を軸足としたのは、シンスプリントと診断された対象全てが軸足を受傷していたためである。測定は練習終了後に実施した。
 測定機器はALOKA社製SSD-1000を用い、プローブは周波数7.5MHzのリニアプローブを使用した。
 測定肢位は、ベッド上端座位で、両足部が床に着かない状態で、足関節は自然肢位、膝関節・股関節は90°、体幹は垂直となるように設定した。測定部位は腓骨頭から足部外果までの全長の上1/4の部位とした。プローブは、下腿長軸に垂直で、脛骨稜と腓骨外側縁を結んだ線上に短軸走査で当てた。その際、画像に脛骨と腓骨、そして後脛骨筋がモニターできていることを確認した。測定は全て同一の検査者が実施した。
 後脛骨筋厚の計測方法は、2つの方法で行った。①後脛骨筋の前部筋膜の長さ(筋幅)、②後脛骨筋の前部筋膜中点から後部筋膜まで下ろした垂線の長さ(筋厚)とした。
 統計学的処理はt検定を用い、シンスプリント群と正常足群の①と②をそれぞれ比較した。また、危険率5%未満を有意水準とした。
【説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、被験者には事前に研究目的、測定方法を十分に口頭にて説明し同意を得た。
【結果】 正常足群の平均値は、①2.14㎝±0.13㎝・②2.25㎝±0.17㎝、シンスプリント群の平均値は、①1.94㎝±0.04㎝・②2.03㎝±0.07㎝であった。
 シンスプリント群は正常足群と比べて、測定項目①・②共に、有意に低かった(p<0.05)。
【考察】 今回の計測結果から、シンスプリント群の後脛骨筋が萎縮していると推測される。足部アライメント異常など様々な要因があると、後脛骨筋をはじめとしたアーチ保持筋がoveruseとなり、痛みを主症状とした炎症症状が骨膜・筋腱に生じると考えられる。結果、シンスプリント群の後脛骨筋が萎縮していたのではないかと推測する。
 本学会において、更に詳細について報告したい。
【まとめ】 エコーを使用してシンスプリント群の後脛骨筋の特徴について検討した。今回は4人と被験者数が少ないため、今後も継続調査が必要と考える。そして、エコーを用いて、後脛骨筋の形態学的な診断が可能になると、臨床において評価・治療・予防に結びついていくと考えられる。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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