東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: S-15
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主題演題
高位頸髄損傷者の幻肢および幻肢痛に対する介入効果 ―シングルケースデザインによる検討―
*片山 脩壹岐 英正澤 俊二
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キーワード: 高位頸髄損傷, 幻肢, 幻肢痛
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抄録
【目的】 脊髄損傷、切断などにより感覚遮断が生じた四肢にしびれ感などの感覚を知覚する経験を幻肢と呼び痛みを伴う場合を幻肢痛と呼ぶ(住谷。2010)。幻肢痛については鏡療法やVirtual Visual Feedbackが緩和したとの報告がある(Catherine. 2009)。しかし、その多くは切断者や胸髄損傷者が対象であり高位頸髄損傷者の幻肢痛に対する介入効果の検討は少ない。そこで高位頸髄損傷により、幻肢および幻肢痛が生じた症例を対象に介入効果をシングルケースデザインにて検討したので報告する。
【方法】 対象は約4年半前に頸髄損傷(C2)完全四肢麻痺と診断された20歳代男性。左肩関節周囲に「後ろから引っ張られている」といった感覚(以下、幻肢)としびれを伴う幻肢痛(以下、幻肢痛)を訴えていた。シングルケースデザインの操作交代型デザインを用い鏡条件(以下、M条件)、Virtual Visual Feedback条件(以下、V条件)、コントロール条件(以下、C条件)の3条件で検討した。条件はランダムに1日1条件、週3日の頻度で各条件16日間行った。介入は10分間とし起立台75度立位でM条件では鏡を設置し自身の姿を見るように指示した。V条件では鏡に頸部から下が隠れるようにシーツを巻き付け、第三者が歩行している頸部から下の映像を流し「自分が歩いているかのように手足を動かすイメージをしてください」と指示した。C条件は何も設置しなかった。幻肢および幻肢痛の強さはVisual Analog Scale(以下、VAS)で評価し、介入前後のVAS減少率を算出した。効果判定は統計学的分析として一元配置分散分析と多重比較(Tukey、Games-Howell)を用い各条件を比較検討した。有意水準はすべて5%未満とした。なお、対象には研究の趣旨を十分に説明し同意を得た。
【結果】 介入前の幻肢/幻肢痛のVAS平均値は、M条件72.7±5.6㎜/63.3±7.2㎜、V条件72.7±4.4㎜/66.6±6.7㎜、C条件71.6±3.6㎜/63.4±8.2㎜で各条件間に有意差はなかった。幻肢のVAS減少率は、M条件10.4±7.0%、V条件13.3±5.4%、C条件4.9±5.3%でM条件とC条件、V条件とC条件間で有意差を認めた(p<0.05)。幻肢痛のVAS減少率は、M条件10.3±11.7%、V条件13.1±8.2%、C条件3.2±8.4%でV条件とC条件間で有意差を認めた(p<0.05)。
【考察】 幻肢、幻肢痛ともにV条件で有意な改善を認めた。幻肢および幻肢痛は知覚-運動連関の破綻により生じることが示唆されている(Sumitani. 2008)。症例は頸髄損傷により感覚脱失したことで知覚-運動連関が破綻し幻肢および幻肢痛が生じたと考えた。V条件は映像に合わせ運動をイメージすることで運動指令と視覚入力による知覚-運動連関が可能となりVASの減少を認めたと考えた。M条件は視覚入力のみであったことからV条件に比べVASの減少が小さかったと考えた。しかし、V条件で有意な改善を得たものの幻肢および幻肢痛は残存した。これは幻肢痛だけでなく脊髄損傷による神経障害痛も混在しているためではないかと考えた。
【まとめ】 高位頸髄損傷者の幻肢および幻肢痛に対する介入効果をシングルケースデザインにて検討した。今回の結果から、映像に合わせて運動をイメージするVirtual Visual Feedbackの有効性が示唆された。
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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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