抄録
【目的】 2010年の日本透析医学会調査では透析導入の原因疾患の第1位は「糖尿病性腎症」(1万6271人)である。
糖尿病合併症である腎症を発症し、透析導入になると身体活動量の制限と時間的制約が課され、生活の質が極めて低下する。
患者の機能維持のためには血糖コントロールと個々に見合った療養指導が必要になる。その中でも、運動指導は専門的な知識を必要とする。腎症の病期や身体機能レベルによって必要な運動量が異なる為、疾患の理解は必要不可欠である。
2012年の診療報酬改定により糖尿病透析予防管理料が新設された。当院は4月から透析予防管理を開始し、診療報酬を算定している。そのチームの一員として、理学療法士も参加し運動指導を行っている。今回、理学療法士の視点から導入に向けての取り組みについて報告する。
【運用方法】 糖尿病透析予防管理は外来通院をしている患者が対象である。そのうちHbA1cが6.5%(NGSP値)以上または内服薬やインスリン製剤を使用し、かつ腎症第2期以上の者に対し、医師が透析予防に関する指導の必要性があると認めた場合に実施する。必要な職種は専任の医師、専任の看護師(または保健師)、管理栄養士であり、加えて薬剤師、理学療法士が配置されていることが望ましいとされている。医師が運動指導の必要があると認めた患者に対しては理学療法士が個別で指導を行う。また、月に1度のケースカンファレンスを行い指導内容の問題点など抽出してチーム内での共通認識を持つようにしている。
【運用実績】 4月からの導入で6月末現在、全体の指導件数は266件でそのうち運動指導は20件であった。
【実績のまとめ】 糖尿病腎症に対する療養指導は病期によって内容が異なる。運動を推奨すべきか抑制すべきかは病期によって判断が必要になる。特に3-b期では個々の身体能力を見極めて運動量を設定することが大切である。
糖尿病ガイドラインでは3-b期は体力を維持する程度、4期はADL維持の為の運動と記載されている。しかし実際の臨床では具体的な指標を欲しているのが現状である。
三次救急病院である当院において理学療法士が外来で運動指導を行う例はほぼ皆無であった。今回、外来で潜在的に埋もれている非透析患者にフォーカスをあてることが可能になった。理学療法士はその患者群に具体的な運動療法を指導することで良好な血糖コントロールに寄与し、結果として合併症の進行予防に貢献できるのではないかと考える。
【今後の展望と課題】 糖尿病チームの中で運動指導を医学的観点から指導出来るのは理学療法士だけである。その為にチーム内での役割は大きい。
診療報酬上、透析予防管理料を算定した患者の1年間の総人数、HbA1cなどの状態変化の報告が義務となっている。その効果が認められればこの様な管理指導料は今後、増えていくのではないかと考える。
現在、糖尿病患者への理学療法は診療報酬では認められていない。その為、糖尿病運動療法の必要性は理解されているにも関わらず理学療法士の積極的活動が困難な病院は多い。この取り組みがきっかけとなり、糖尿病療養の重要性がさらにクローズアップされ、糖尿病の理学療法が算定可能となれば良いと考えている。