東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-08
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一般口述
トレッドミル上における視覚的情報の変化が健常成人の快適歩行速度に及ぼす影響
*瀧澤 ちなみ橋場 貴史
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抄録

【目的】 トレッドミルを利用した歩行は、歩行分析および歩行訓練の手段として注目されている。しかしトレッドミル上の快適歩行速度は床上での快適歩行速度より速く感じられることがあり、歩行障害者にトレッドミル歩行練習を行う場合、速度設定を配慮しなければならない。本研究は視覚的情報を用い、トレッドミル歩行と平地歩行の快適歩行速度の差異を解消できるかを検討した。
【方法】 健常成人20名(男性11名、女性9名:平均年齢21歳)を対象とした。方法は、床上とトレッドミルで最も快適な速度で歩行するように指示し、両歩行の快適歩行速度を求めた。次に時速4㎞, 6㎞, 8㎞の3条件で撮影した映像を視覚的情報とした。その3条件の映像をスクリーン上に映したときのトレッドミル上快適歩行速度を求めた。トレッドミル上快適歩行速度と床上快適歩行速度の比較はt検定、トレッドミル上快適歩行速度と視覚的情報を用いた3つの条件での歩行速度は反復測定の分散分析を用い、多重比較(scheffe)を行った。有意水準は5%とした。
【結果】 床上快適歩行速度とトレッドミル上快適歩行速度を比較すると床上快適歩行速度はトレッドミル上快適歩行速度の1.88倍になり、床上が有意に速い結果となった。また視覚的情報を用いた全ての条件で、トレッドミル上快適歩行速度と時速8㎞時快適歩行速度以外は有意に減少した。
【考察】 トレッドミル上の快適歩行速度は床上での快適歩行速度より速くなるという従来からの報告と同様の結果が得られた。床上快適歩行速度とトレッドミル上快適歩行速度の差異を解消することは出来ず、むしろトレッドミル上快適歩行速度がより遅くなる結果となった。このことから時速8㎞時以上の映像を提示しなければ、体性感覚と視覚的情報の矛盾を解消できないことが分かった。今回、この矛盾を解消することは出来なかったが、視覚的情報によってトレッドミル上の快適歩行速度をコントロールできることが確認できた。また今回の研究では視界の端にまで映像を提示できなかったが、視覚的情報によって快適歩行速度は変化したことから視覚による情報量は大きく、平地歩行とトレッドミル歩行の相違点として大きな要因であると考えられる。体性感覚と視覚的情報の矛盾を解消し、トレッドミル上快適歩行速度を速くするためにはより速い映像を提示する、視界の端まで映像を提示することが必要であると考えられる。
【まとめ】 視覚的情報を用い、トレッドミル歩行と床上歩行の快適歩行速度の差異を解消できるかどうか検討した。床上快適歩行速度、トレッドミル上快適歩行速度、3つの視覚的情報を用いたトレッドミル上快適歩行速度を求め比較したが視覚的情報を用いても床上快適歩行速度との差異を解消することができなかった。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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