東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-09
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一般口述
Berg Balance Scaleを用いた歩行自立度判定と歩行能力との関連性 ―当院回復期リハビリテーション病棟におけるカットオフ値の検討―
*舘 友基岩田 研二海野 智史山﨑 年弘木村 圭佑坂本 己津恵松本 隆史櫻井 宏明金田 嘉清
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抄録

【目的】 臨床現場において特に歩行自立の判定には療法士の主観に頼ることが大きい。Berg Balance Scale(以下、BBS)は転倒リスクや歩行自立の指標として幅広く用いられ、回復期リハビリテーション病棟においても歩行自立の指標としての報告が多くされている。しかしながら、対象者の疾患、使用補助具、施設内環境、コンプライアンスなどにばらつきが見られることが問題点として挙げられる。そこで今回我々は当院における退院時歩行自立度を客観的に判定することを目的にBBSを用いて歩行能力との関連性について検討を行った。
【方法】 対象は2011年10月から2012年5月の間に当院回復期リハビリテーション病棟へ入棟し、退院時まで継続してBBSがフォローできた55名(脳卒中患者11名、大腿骨骨折患者24名、その他の疾患20名)。対象の内訳は男性11名、女性44名、平均年齢82.4±5.8歳、退院時の平均発症(受傷)後日数114.5±23.7日であった。歩行自立度の指標はFunctional Independence Measure(以下、FIM)6点以上を自立群、5点以下を非自立群とした。退院時の歩行自立群は35名、非自立群は20名であった。退院時BBS、FIM総得点および各項目得点、移動手段を当院データベースより後方視的に調査した。なおBBS検査の試行に困難をきたすような者は除外した。自立群は補助具別に検討するために、独歩群、杖群、walker群(シルバーカー含む)の3群に分類した。統計処理はIBM SPSS Statics18.0を用いて、自立・非自立群の検定にはMann-WhitneyのU検定を、補助具別の3群間比較には多重比較検定(Tukey-Kramer法)を用い、有意水準5%とした。さらに自立を予測する為のカットオフ値を、Receiver Operating Characteristic Curve(以下、ROC曲線)を用いて検討した。なお、本研究は当院の倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】 退院時BBSは自立群48.2±7.6点、非自立群28.7±12.8点で有意差を認めた(p<0.05)。退院時歩行自立度のBBSカットオフ値はROC曲線より41点(感度86%、特異度80%)と判断した。補助具別では退院時独歩群4名、杖群13名、walker群18名となった。退院時BBS得点は独歩群54.3±1.3点、杖群52.2±3.5点、walker群44.0±8.0点となり、独歩群とwalker群、杖群とwalker群に有意な差を認めた。
【考察】 本研究では客観的指標であるBBSを用いて退院時歩行自立度の判断基準を検討した。望月の先行研究によると屋内歩行自立のカットオフ値は43点(得点範囲は36~56点)としているが、明確な歩行補助具の記載はされていない。本研究での退院時歩行自立度のカットオフ値は41点(得点範囲は25~56点)と先行研究よりやや低い値であるが当院では歩行器などのwalker群の対象者が多かった事が考えられた。今回の結果より自立度だけでなく、歩行補助具の選択時の一指標としてBBSが活用できると考えられた。今後は非自立群から自立群に移行した対象者のBBSの下位項目の検討を行っていく。本研究の限界としてはあくまで当院での結果であるため各病院・施設で検討を行う必要性があると思われる。
【まとめ】 当院回復期リハビリテーション病棟の歩行自立カットオフ値はBBS41点であった。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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