東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-17
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一般口述
当院の末梢顔面神経麻痺患者への理学療法
*三浦 央吉田 千尋塚本 彰糸川 秀人
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抄録

【目的】 末梢性顔面神経麻痺(以下、顔面神経麻痺)の理学療法として近年、病的共同運動や顔面拘縮の予防を目的とした顔面筋体操や顔面筋ストレッチが推奨されている。当院では2004年4月より日本顔面神経麻痺研究会の麻痺スコア40点法(以下、柳原法)を下に顔面筋体操と顔面筋ストレッチのリーフレットを作成し理学療法を施行している。今回、当院での顔面神経麻痺の理学療法を紹介し、治療結果とその検証から今後の課題について考察を加えて報告する。
【当院での取り組み】 顔面神経麻痺と診断され入院した全症例に対して入院時より薬物療法と理学療法を施行している。理学療法ではリーフレットに沿って顔面筋体操と顔面筋ストレッチを施行後、温熱療法としてキセノン光治療器を施行している。
【方法】 2009年4月から2012年5月までに当院で顔面神経麻痺と診断され理学療法を施行した入院患者20名(男性11名、女性9名、年齢57.7±18.4)を対象とした。
 治療結果として柳原法を用いて、入院時と退院時にそれぞれ評価した。また、治療結果の検証として、退院時の柳原法の点数と(1)理学療法開始時の柳原法の点数、(2)眼輪筋のElectroneurography(以下、ENoG)、(3)口輪筋のENoG, (4)年齢との関係をスピアマンの積率相関係数を用いて検証した。なお、相関係数が0.4以上もしくは-0.4以下をもって相関ありとした。
【結果】 入院時の柳原法は9.5±18.4点、退院時の柳原法は18.1±9.6点であった。退院時の柳原法の点数と各因子の関係では、入院時の柳原法の点数とr=0.59で正の相関関係、眼輪筋のENoGとr=0.67で正の相関関係、口輪筋のENoGとr=0.6で正の相関関係にあり、年齢とはr=0.26で相関関係になかった。
【考察】 今回の結果より、当院の顔面神経麻痺患者に対し薬物療法と理学療法を施行することで病的共同運動や顔面拘縮を予防し、顔面神経麻痺改善の効果があると考えられた。また、結果の検証より顔面神経麻痺の予後予測因子としては報告されている通り、入院時の柳原法の点数やENoGが関与すると考えられた。当院ではこれまで原則として顔面神経麻痺の理学療法は入院中のみ行なっており、希望者のみ外来にて実施していた。しかしながら、入院時の柳原法の点数が低い方や、ENoGが低い方は、短期ではなく長期的な数か月単位での回復が見込めるという報告もある事から今後、長期的な対応が必要な症例に対しての関わりが必要と考えられた。
【まとめ】 当院の顔面神経麻痺への理学療法の紹介と取り組みの結果について報告した。結果より、当院の顔面神経麻痺への理学療法は他の報告と同様の効果があると考えられ、課題として長期的なフォローをどうするかが挙げられた。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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