東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-16
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一般口述
脳卒中片麻痺症例に対する膝関節屈曲アシスト装具の歩容改善効果の検討 ~遊脚期に着目して~
*古川 未来渡邊 充戸田 恵美子中村 美穂太田 進
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キーワード: 脳卒中, 補装具, 歩行
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抄録

【目的】 脳卒中片麻痺症例における歩容の特徴として遊脚期フットクリアランスの減少、麻痺側膝関節屈曲角度の減少が報告されている。脳卒中片麻痺症例の歩行能力を改善するためには、遊脚期のそれらの要因の改善も重要となる。本研究の目的は、新規開発された膝関節屈曲アシスト装具(支柱付軟性膝装具にゴムによる屈曲アシストを加えたもの)の脳卒中片麻痺症例への効果と適応の検討をすることとした。
【方法】 対象者は介護老人保健施設の利用者と回復期病院に入院している脳卒中片麻痺症例、計16名とした。歩行路は9m、歩行路中央から水平方向に4m離れた位置にビデオカメラを設置した。反射マーカーを6ヶ所(肩峰、上前腸骨棘、大転子、大腿骨外側上顆、外果、第五中足骨頭)に貼付し、膝装具なし、膝装具のみ、膝関節屈曲アシスト装具ゴム弱、中、強(以下、ゴム弱、中、強)の5条件の至適歩行を2回ずつ動画撮影し、下肢関節角度、フットクリアランス、ストライド長、ステップ長、ケイデンス、歩行速度を算出した。歩行後に5条件の歩きやすさの順位を聴取した。また、筋緊張や下肢運動機能等の検査測定も実施した。
【結果】 膝装具なし群と比較して、膝装具のみ、ゴム弱、中、強の装着により遊脚期膝関節屈曲角度の変化量は、16名中13名の増加がみられた(膝装具のみ12名、ゴム弱10名、ゴム中9名、ゴム強7名)。また、16名中14名の歩行速度が速くなった(膝装具のみ11名、ゴム弱10名、ゴム中10名、ゴム強8名)。しかし、膝装具なしと4種類の装具との間には有意差はなかった。
 歩行速度改善症例数が多かったゴム弱群に着目すると、膝装具なしより歩行速度が速くなった症例は10名、遅くなった症例は6名であった。歩行速度が速くなった群はストライド長とケイデンスが有意に増加し(p=0.03, p=0.04)、ゴム弱の歩行速度増加群では、遊脚期膝関節屈曲角度変化量の増加傾向(p=0.07)がみられた。
【考察】 今回用いた軟性膝装具のみにおいても、膝関節屈曲角度や歩行速度の改善が認められた。また、装具のみで膝関節屈曲角度の減少や歩行速度の低下が起きた症例において屈曲アシストを用いると膝関節屈曲角度が改善し歩行速度が改善する症例も散見された。4種類の装具の適応を検討したが個人差が大きく、膝関節屈曲アシスト装具に各々適応があることが示された。何らかの装具の装着により遊脚期膝関節屈曲角度の変化量と歩行速度が増加したが、それぞれ歩きやすさの順位とは相関せず、対象者がより歩きやすい装具条件を考慮する必要がある。
【まとめ】 これまで片麻痺患者への装具療法として足関節へのアプローチは多く行われてきたが、膝関節へアプローチした研究の報告は少ない。今回使用したいずれかの装具を用いると、対象者の約81%の遊脚期膝関節屈曲角度変化量が増加し、約88%の歩行速度が改善したが、その適応は明らかにはできなかった。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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