東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-33
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一般口述
ギャッチアップが仙骨部に与える影響
*吉田 千尋水口 且久菱田 実塚本 彰開 千春長谷田 泰男
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抄録

【目的】 急性期の入院患者に対し、ベッドをギャッチアップ(以下、G-Up)する事が早期離床や呼吸ケアの観点から重要だとする報告は多い。しかし、褥瘡の発生要因は「応力(圧縮応力、せん断応力、引っ張り応力)×時間×頻度」とされ、特に圧縮応力に関しては40㎜Hg以上の圧を長時間かける事が望ましくないとされていることから、G-Upが仙骨部の褥瘡の発生や悪化を助長するとして病棟で敢行されていないことがある。そこで今回、必要な患者に対し病棟で適切にG-Upを実施するために、G-Up角度と時間の経過が仙骨部の圧縮応力・ずれに与える影響について検証し、今後の課題について若干の考察を加えて報告する。
【方法】 本研究の趣旨に賛同し同意を得た健常者12名(男性5名、女性7名、年齢27.9±5.3)を対象とした。マットレスには株式会社八神製作所のサーモコントアマットレス(ウレタンフォーム製)、仙骨部の圧測定には株式会社ケープ社の携帯型接触圧力測定器PalmQを使用した。足側拳上角度を20°とし、頭側拳上角度を30°、45°、60°でそれぞれ2時間行い仙骨部にかかる圧を測定した。なお、圧測定は3回測定し平均値を記録した。また、ずれの測定は乳様突起と足関節外果にランドマークし、頭側のずれをベッド上端から乳様突起、足側のずれをベッド下端から足部外果までの距離を測定した。手順は被験者の上前腸骨棘とベッドの屈曲点を揃えた位置で背臥位となり、足側拳上→頭側拳上→背抜き→頭側下降→足側下降→背抜きの順で行なった。
【結果】 仙骨部圧が40㎜Hgを超えたのは、背臥位時もしくは足側下降時のみであり、どのG-Up角度においても2時間以内に40㎜Hgを超えることはなかった。ずれの距離はG-Up角度が大きい方が頭側、足側ともに増加する傾向にあった。また、どの角度でも背抜きの前後で被験者の疼痛の訴えが軽減し、仙骨部圧の有意な低下がみられたが、40分以降には踵や殿部、肩甲骨での疼痛の訴えがみられた。
【考察】 今回の結果、本研究のG-Up方法では、2時間以内に仙骨部に褥瘡発生の危険性があるとされる40㎜Hg以上の圧がかかることはなかった。しかし、G-Up角度の増加によりずれの距離が増加した事から、ずれ力による褥瘡発生の危険性が示唆された。また、背抜きにより仙骨部圧が軽減した事や40分以降に疼痛の訴えがみられた事から、40分以内であれば病棟でもG-Upを敢行できる患者がいると考えられた。今後は、疼痛の訴えがあった部位の圧の把握と、対象を患者とした場合の検討が必要と考えられた。
【まとめ】 G-Up角度と時間の経過が仙骨部の圧縮応力・ずれに与える影響について健常者を対象に検証した。結果より、2時間以内のG-Upでは仙骨部圧は40㎜Hgに達しないが、ずれの増加がみられた。本研究のG-Up方法では40分以内であれば、病棟でもG-Upを敢行できる患者がいると考えられた。今後は、疼痛部位の圧の把握と、対象を患者とした場合の検討が必要と考えられた。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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