東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-43
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一般口述
急性期病院入院時のNIHSSを用いた機能予後の検討
*小田 知矢眞河 一裕小林 靖
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抄録

【目的】 愛知県西三河南部東医療圏では2008年より脳卒中地域連携パスを稼働している。計画管理病院である当院は急性期治療を担当しリハビリテーション(以後リハビリ)治療のかじ取り役として多岐にわたる患者の退院、転院調整を行っている。
 近年の医療制度下で脳卒中急性期病院には、早期予後予測による適切な転帰先の検討が求められている。そこで回復期病院に転院した患者を対象に脳卒中地域連携パス内の評価項目であるNIH Stroke Scale(以下NIHSS)を用いて重症度分類し、各群のプロファイルを分析した。その結果から急性期病院入院時のNIHSSが機能予後予測に反映されるか否かを検討した。
【方法】 対象は2009年1月~2010年12月に当院から脳卒中地域連携パスby sconeを適応し回復期病院へ転院した患者の内入院時に医師がNIHSSを評価した患者81名(男性54例 女性27例 平均年齢72.5±10.2歳)とした。次に対象をNIHSSにより極軽度のA群(0~4点)、軽症のB群(5~9点)、中等症のC群(10~19点)、重症のD群(20点以上)の4群に分け、各群の急性期病院在院日数、回復期病院在院日数、回復期退院時のFunctional Independence Measure(FIM)の総得点と変化量、Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側運動機能及び非麻痺側運動機能の点数を比較検討した。方法は脳卒中地域連携パスby sconeのデータを後方視的に分析した。
【結果】 各群の内訳はA群32例、B群23例、C群20例、D群6例であった。急性期在院日数はA、B、C、Dの順に平均28.4日、31.6日、39.4日、37.8日であった。回復期在院日数は70日、80.3日、97.1日、84日であった。回復期病院退院時のFIM総得点の中央値は113点、113点、84点、63.5点であった。回復期病院入院中のFIM変化量の中央値は9.5点、8点、24点、7.5点であった。回復期病院退院時のSIASの麻痺側運動機能の中央値は21.5点、22点、20点、9点であり非麻痺側運動機能は5点、5点、5点、3点であった。
【考察】 極軽症群であるA群では急性期、回復期在院日数はともに最短でありFIMも自立レベルまで改善していた。約3ヶ月で治療が完結し自宅退院している。B群も転帰は同様な傾向を示したが在院日数が長くなっていた。中等症であるC群は急性期、回復期ともに在院日数の増加がみられ、FIMの点数も大きく低下した。重症度が上がることにより安静を伴う医学的治療の必要性が増したため在院日数が増加したと考える。しかしFIMの変化量は顕著に増加しており長期のリハビリによってADL能力の増加と麻痺運動機能及び非麻痺運動機能の向上がみられていた。この結果からB群とC群では具体的な目標設定と、他職種と連携した治療プログラムの立案、実践が患者のADLと自宅復帰率を向上させることが出来るのではないかと考える。D群は機能予後が最も悪く、非麻痺側機能の低下もみられることから多くの介助量が必要になる。しかし、在院日数はC群よりも短くなっていた。機能改善にこだわらず、自宅環境設定や施設入所など介護保険サービスへの切り替えを早期に行っていったのではないかと考える。
【まとめ】 NIHSSでの重症度分類による機能予後予測は急性期病院からの適切な退院、転院調整に有効であることが示唆された。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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