東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-47
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一般口述
脳性麻痺児におけるWhole Body Vibrationを用いたウォーミングアップ効果の検討
*宮戸 史岩越 康真藪本 保酒井 章弘西村 正明福富 悌
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抄録

【目的】 脳性麻痺(以下CP)児は、筋緊張の亢進や関節可動域の制限があり、それらは理学療法で運動学習を行わせる上で妨げとなるため、短時間で効率よく運動学習が行える状態に整える必要がある。そこで、ウォーミングアップ(以下W-up)を行うことにより、短時間でコンディションを整え、効率よい理学療法を提供できないかと考えた。本研究の目的は、CP児の理学療法において効率よい運動学習を行わせるために、Whole Body Vibration(以下WBV)のW-up効果を明らかにすることである。
【方法】 対象は痙直型両麻痺のCP児6名(10歳4ヵ月±1歳9ヵ月)とした。粗大運動能力はGross Motor Function Classification System(GMFCS)levelⅢで両クラッチ歩行レベルとした。W-up効果を確かめるために、理学療法前のW-upとしてWBVを行う日とStatic stretching(以下SS)を行う日の二日間を設定し、以下の項目についての経時的変化を測定した。生理学的指標として、体温、下肢の筋温と表面温度、脈拍を測定した。筋骨格系の指標として、下肢の関節可動域(straight leg raising test;以下SLRと膝窩角)、筋緊張(Modified Tardieu Scale;以下MTS)を測定した。パフォーマンスの指標として、5m歩行の歩数と時間を測定した。WBVのW-up効果を検討するために、(1)WBV実施日のW-up前とW-up直後の変化について比較した。(2)各日のW-up直後・10分後・20分後の結果をW-up前の結果に対する比率で示し、WBV実施日とSS実施日を比較した。
【結果】
(1) WBV実施日の筋温はW-up前33.23±0.28℃、W-up直後34.05±0.26℃(P<0.05)であった。他の指標に有意差は見られなかった。
(2) WBV実施日とSS実施日の比較において、筋温のW-up前に対する各時点の比率は、W-up直後がWBV実施日1.025 SS実施日1.018、10分後はWBV実施日1.046 SS実施日1.024(P<0.05)、20分後はWBV実施日1.051 SS実施日1.026(P<0.05)であった。他の生理学的指標・筋骨格系・パフォーマンスの指標に有意差はみられなかった。
【考察】 CP児に対してWBVを用いたW-up効果について検討したところ、WBVをW-upに用いると短時間で筋温を上昇させることができ、その後の理学療法中も筋温の上昇が続くことが明らかになった。パフォーマンスについてはSS実施日と比較して有意差は見られなかったが、経時的な向上がみられた。WBVにより短時間でW-up効果が得られることで、その後の理学療法による運動学習を効果的に行えた可能性が考えられた。
【まとめ】 CP児の理学療法においてW-upとしてWBVを用いることで、理学療法を効率よく行える可能性が示唆された。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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