抄録
【目的】 地域在住高齢者の栄養状態と身体的特徴及び生活・運動機能の関連について検討する。
【方法】 65歳以上の地域在住高齢者267名を対象に、簡易栄養状態評価表を基に、栄養状態良好群(196名)と低栄養リスク群(71名)に群分けし、身体的特徴および生活・運動機能について比較検討した。身体的特徴は上腕周囲長・上腕筋面積・下腿周囲長、骨格筋指数、サルコペニア(The European Working Group on Sarcopenia in Older Peopleの基準を一部変更して判定)の有無、運動機能は握力、大腿四頭筋筋力・開眼片足立時間・5m歩行時間を測定した。統計は2群間のスケール尺度の比較にはt検定、名義尺度の比較はχ二乗検定を用い、有意水準は5%とした。なお、本研究は名古屋大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】 低栄養リスク群は栄養状態良好群と比較して体重、BMIが有意に低値であった(p<0.01)。身体的特徴では、低栄養リスク群で栄養状態良好群と比較して、上腕周囲長、上腕筋面積、下腿周囲長、骨格筋指数の全ての測定項目で有意に低値であった(上腕周囲長、下腿周囲長はp<0.01、骨格筋指数はp<0.05)。サルコぺニアの発生は全体で20%(53/267)、栄養良好群、低栄養リスク群別では30/196, 23/71となり有意差が認められた。低栄養リスク群のオッズ比は2.7(サルコぺニア該当/サルコペニア非該当)であった、運動機能では握力、大腿四頭筋筋力で低栄養リスク群は栄養状態良好群と比較して有意(p<0.01)に低値を示し、開眼片足立ち、5m歩行時間では両群に有意差は認められなかった。
【考察】 簡易栄養状態評価に基づいた低栄養リスク群では、身体計測の指標において栄養状態良好群と比較して骨格筋量の減少、高いサルコぺニアのリスクが示唆された。運動機能においては歩行や開眼片足立ちでは有意差が認められなかった一方で、握力や下肢筋力で有意な低下が認められた。すなわち潜在的低栄養者では、歩行や開眼片足立といった比較的総合的な運動機能には影響していなかったが握力、大腿四頭筋筋力といった要素的な運動機能には早くから影響が出現している可能性が示唆された。今回の検討に用いた簡易栄養状態評価は簡便な検査法であり、サルコぺニアのスクリーニングとしても有用であることが示された。今後、地域在住高齢者の簡易栄養状態評価表による低栄養リスク群の把握および介入方法の検討、介入効果の検証が必要と思われた。
【まとめ】 低栄養リスク群では、総合的な運動機能の低下に先行して要素的な運動機能が低下している可能性がある。簡易栄養評価は簡便に実施が可能であり、運動機能低下やサルコぺニアについてのスクリーニングとしても有用であることが示唆された。