東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-50
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一般口述
整形外科診療所での短時間型通所リハによる運動器機能向上プログラムが利用者に与える効果について
*大村 善彦佐藤 栄作九戸 栄介
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抄録

【目的】 平成21年の介護報酬改定により、従来外来リハで対応していたものを通所リハに移行させるかたちで、「(1~2時間の)短時間型通所リハ」が新設された。またみなし指定により、診療所での通所リハが可能となった。当院では、外来診療の昼休みを利用し、平成22年7月より短時間型通所リハを提供している。今回当院が提供している運動器機能向上プログラムが利用者に与える効果と、どのような利用者に一番効果があるのかを明らかにするため検証を行った。
【方法】 対象は、平成22年7月から平成24年5月の間に当院の短時間型通所リハを利用した要支援1から要介護2の利用者32名とした。なお本研究に先立ち、全ての利用者に口頭にて十分な説明を行い、同意を得た。利用者の利用開始月と現在のTimed up and go test(以下TUG)の値を比較し、改善されているかどうか判定を行った。また介護度別にTUGの値が改善している利用者の割合を調べ、介護度の違いにより効果に差があるのか検証した。
【結果】 TUGの値は要支援1の利用者のうち90%に改善みられ、要支援2では71.9%、要介護1で50%、要介護2で16.6%であった。
【考察】 今回の調査の結果から適切な運動器機能向上プログラムを実施することにより、運動器機能の改善がみられることがわかった。また、要介護利用者よりも要支援利用者の方が、改善率が高かった。当院では要支援者、要介護者ともに20分の個別リハを必ず実施するようにしており、1対1での十分な運動器機能向上プログラムを全員に提供している。要支援利用者は疾患が重複していることが少なく自宅での活動性も高いため、短時間型通所リハで関節可動域訓練や、筋力増強、バランス訓練、動作指導を行うことにより運動器機能が疾患、内部疾患などを合併しており、なかには状態の悪化や入院により休むことが多い利用者がみられた。そのため運動器機能向上プログラムだけでは、対応できず包括的なアプローチが必要であると考えられる。要介護状態の利用者については状態の改善は少ないが、介護度は維持していることが多い。そのため、状態維持の効果は期待できる。適切なサービスを提供し、介護予防をしていくために施設の特性や役割を理解し、ケアマネージャーに適切に利用者を選択してもらい、高い効果が期待できる利用者に運動器機能向上プログラムを提供することが重要であると考える。
【まとめ】 平成21年の介護報酬改正により、通所リハビリが診療所でも出来るようになった。しかし全ての要支援、要介護者に同様の効果があるわけではなく、適切に対象を見極める必要がある。今回の調査結果から診療所で行う短時間型通所リハでは積極的に運動器機能向上プログラムを実施することで、特に要支援利用者の運動器機能が向上し介護予防出来ることがわかった。また、ケアマネージャーに対しても啓蒙活動を行い、地域全体でアプローチしていくことも今後の課題として重要である。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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