東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-53
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一般口述
転倒が契機で廃用症状により寝たきりとなった超高齢者が、訪問リハにて階段を昇降し外出可能となった1症例 ~自分の足で外に出たい~
*徳力 康治北澤 友衣市川 博和松田 祐樹伊藤 みゆき赤堀 美智恵森 文子
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抄録

【はじめに】 当院が所在する四日市市は、伊勢湾台風以後、水害対策や高度成長期の住宅確保の為、丘陵地を開拓した住宅地が多い。その為、道路から玄関までの間に階段のある住宅も多い。住宅購入時は、階段が外出の障壁になると考慮しない場合が多いが、高齢になるとバリアになり自宅から外出する事が困難になる。今回我々は、超高齢女性が転倒を契機に寝たきりになった症例において、訪問リハビリテーション(以下リハ)と多職種アプローチにより、自宅前の階段を昇降し外出が可能となった1症例について報告する。尚、本人家族には趣旨説明し同意を得ている。
【症例紹介】 89歳女性 診断名 廃用症候群 パーキンソニズム 変形性膝関節症
 家族構成 娘夫婦との3人暮らし
【訪問までの経過】 発症以前は、要介護1、杖歩行レベル 週に通所リハ2回、通所介護2回利用。平成21年11月下旬 自宅にて下肢の脱力による転倒で、立てなくなる。以後、寝たきり状態となる。診察の結果、脳梗塞や骨折等の所見は否定され、廃用症候群と診断される。自宅は、道路と玄関との間に1段15㎝の高さの階段が16段あり、通院・通所が困難となる。入院も勧められたが、本人・家族の希望で在宅生活を継続する事になる。介護保険変更申請にて要介護5と認定。12月より訪問診療・訪問リハ・看護開始。訪問リハ依頼目的は、自分の足で(通所に)外出したいであった。
【初回評価】 パーキンソニズムによる四肢体幹の筋緊張の亢進、転倒時に痛めたと思われる股関節周囲の痛みを訴えた。関節可動域は、股関節、膝関節、足関節に中等度制限を認めた。ADLは全介助 せん妄症状みられた。当面の目標としてベッド上動作の介助量軽減と端座位保持の獲得とした。
【経過】 12月初旬:訪問開始2週間程は、せん妄もあり意欲が向上せず褥創が出来始めた。
 12月末:意欲向上し端座位が可能。
 平成22年1月:起立動作開始。日常生活場面での可能な動作支援目的で訪問介護導入
 2月:歩行器歩行が可能。
 3月:通所を再開したいと希望が出たが、その時点では自力での階段昇降は困難と判断。
 9月:階段昇降可能。その時点で通所再開を促すも、本人・家族は時期早尚と判断される。
 平成23年6月:監視下で階段昇降し通所リハ再開。
【まとめ】 本症例では、発症直後からケアマネのプランに訪問リハの依頼があり、リハの介入が早かった。結果、超高齢者においても、早期からリハが介入し適切なアプローチと多職種連携を行う事と、家族の献身的関わりで階段を昇降する事が可能となり、本来の目的であった通所リハに復帰できた。廃用症状は、機能的な向上を目標にする事だけでは改善する事が少ない為、意欲を引き出す事が重要である。週1~2回で1回60分程度の訪問リハの効果を活かす為には、具体的な目標をたて、在宅の中で重要な役割を果たす家族や、在宅に関わるスタッフが、生活の中で継続したプログラムをいかに実践していけるかが課題である。理学療法士は、廃用症状を改善させ意欲を向上させるキーマンである。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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