東洋食品研究所 研究報告書
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レトルト殺菌によるイノシン酸分解を抑制する手法の検討:pH 調整
笹井 実佐 湯浅 佳奈
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2025 年 35 巻 p. 5-8

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抄録
容器詰加工食品に加熱加圧殺菌(レトルト)を施すことによって,内容品の風味が変化することは感覚的によく知られているが,変化する成分について系統的に整理し,かつそれをもとに風味の改善を試みた例は少ない.我々はこれまでに,鰹節抽出液(鰹だし)中のうま味成分であるイノシン酸がイノシンおよびヒポキサンチンに分解されること,およびイノシン酸とグルタミン酸を含むモデル液の官能評価からイノシン酸の減少が風味変化の一因となりうることを示した.このことから,レトルトによって生じるイノシン酸の分解を抑制することができれば,レトルト前の風味を保持できる可能性があると考えた.  そこで今回はpHに着目した.硼珪素酸ガラス製アンプル管に試料を一定量封入し,任意温度および時間で試料を加温することでレトルト殺菌を再現し,イノシン酸量の変化を調査した.試料には調製した鰹だしまたはイノシン酸二ナトリウムを含むpH4.8~6.8の緩衝溶液(モデル液)を用い,加熱温度は110℃,120℃,130℃とした.試料にかかる熱履歴が温度によらず等しくなるように加温時間を設定した.加温後の試料についてイノシン酸量を求めたところ,pH4.8よりもpH6.8の試料においてイノシン酸残存率が高く,熱履歴が等しいと加温温度によらず分解量も等しくなることが分かった.このことから,鰹だしのpHを調整することでイノシン酸の分解を抑制できる可能性が示唆さされたため,鰹だしのpHを調整して同様に加温試験を実施したところ,試料によって異なる結果を示し,モデル液における結果は再現されなかった.これは鰹だし中の多様な成分の影響と考えられたことから,レトルト殺菌によるイノシン酸の分解抑制によりレトルト前の風味を保持するという本研究の目的に対し,pH調整は適さない手法であると判断した.
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