抄録
先体反応と呼ばれるエクソサイトーシス現象はほとんどの後生動物の精子-卵相互作用において必須のプロセスである。卵外被に存在する分子群が先体反応誘起を担っており、それらは複合糖質である場合が多い。コアタンパク質を持つものも持たないものも存在するが、それらのグリカンの構造の解明が現在進行中であり、そこから得られる新しい知見は先体反応誘起の分子メカニズムに新たな視線を投じることとなるだろう。これら先体反応誘起に関わるグリカンはO-グリコシド型結合やフコシル化、硫酸化、シアリル化といった修飾を受けており、その修飾形式が原始的な後口動物からより複雑な脊椎動物まで保存されていることから、先体反応というものは一般的に糖-タンパク質相互作用に仲介されているものと考えられる。ここではその無脊椎動物・脊椎動物双方の卵外被における先体反応誘起に関わる糖鎖の一次構造及び重要な特徴を概説する。