Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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19 巻, 106 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
ミニレビュー
  • Herath Jayantha Gunaratne
    2007 年 19 巻 106 号 p. 61-66
    発行日: 2007/03/02
    公開日: 2008/12/12
    ジャーナル フリー
    先体反応と呼ばれるエクソサイトーシス現象はほとんどの後生動物の精子-卵相互作用において必須のプロセスである。卵外被に存在する分子群が先体反応誘起を担っており、それらは複合糖質である場合が多い。コアタンパク質を持つものも持たないものも存在するが、それらのグリカンの構造の解明が現在進行中であり、そこから得られる新しい知見は先体反応誘起の分子メカニズムに新たな視線を投じることとなるだろう。これら先体反応誘起に関わるグリカンはO-グリコシド型結合やフコシル化、硫酸化、シアリル化といった修飾を受けており、その修飾形式が原始的な後口動物からより複雑な脊椎動物まで保存されていることから、先体反応というものは一般的に糖-タンパク質相互作用に仲介されているものと考えられる。ここではその無脊椎動物・脊椎動物双方の卵外被における先体反応誘起に関わる糖鎖の一次構造及び重要な特徴を概説する。
  • Nongnuj Tanphaichitr, Kym F. Faull, Arman Yaghoubian, Hongbin Xu
    2007 年 19 巻 106 号 p. 67-83
    発行日: 2007/03/02
    公開日: 2008/12/12
    ジャーナル フリー
    脂質ラフトはコレステロールや糖脂質、飽和脂肪酸に富んだ秩序膜マイクロドメインである。また、ラフトには細胞接着やシグナリングに関わる分子が集積し、このような現象の足場であると考えられている。ラフトは非常に活発な研究分野であるが、多くの点が論争中である。最近画像研究の進歩により、個々のラフトがナノメートルのサイズであることが分かった。このことは、細胞から低密度膜画分として得られるラフトは個々のラフトが合体した “マクロラフト” であるということを示唆している。さらに、TritonX-100を用いたラフトの単離について、界面活性剤がラフトの形成を引き起こしているのではないかという論争が残っている。そこで、この分野の研究者達は、よりマイルドな非イオン性界面活性剤や物理的な力 (たとえば、窒素キャビテーション) を用いることによりラフトを単離してきた。精子―卵相互作用は、細胞接着やシグナリングにおけるラフトの役割を立証するのに適した系統である。最近、我々は受精能を獲得したブタ精子由来のTritonX-100不溶性膜ラフトが、受精能を獲得していない精子ラフトに比べてより低いKd値でZP (zona pellucida) に結合することを明らかにしてきた。これらの結果は、受精能を獲得した精子は受精能を持たない精子に比べてZPへの結合能が増幅されているという事実を後押ししているかもしれない。また、受精能を獲得した精子がZPに結合しやすいという現象の一因として、受精能を獲得する際にコレステロールが放出されるにも関わらず、依然として十分量のラフトが存在するという事が挙げられる。注目すべき事に、通常、体細胞由来のラフトのマーカーとして用いられるGM1が、受精能を獲得した精子ラフトには存在しない。むしろ、生殖細胞特異的なsulfogalactosylglycerolipid (SGG) の70%が精子ラフトには存在し、精子ラフトのマーカーとして魅力的な候補となっている。それでも、これらの研究において用いたラフトは、TritonX-100によって単離したものであるから、物理的な力を用いて調製したラフトを使って再実験をしてみる必要性はある。最終的には、精子由来ラフトが体細胞由来のラフトと同様に、ナノメートルのサイズなのかどうかを、適切なマーカーを用いて画像研究を行い決定しなければならない。
  • Shinji Miyata, Chihiro Sato, Ken Kitajima
    2007 年 19 巻 106 号 p. 85-98
    発行日: 2007/03/02
    公開日: 2008/12/12
    ジャーナル フリー
    ポリシアル酸 (polySia) はシアル酸 (Sia) の重合体で、構成Sia分子種の種類および内部Sia残基の結合様式の違いによって多様な構造を呈する。神経細胞接着分子 (NCAM) 上のα2,8結合polySia構造についての研究が最も盛んに行われており、polySiaは脊椎動物脳の発生や分化に関わる細胞間相互作用の調節因子として認識されている。しかしNCAM上のα2,8結合polySia以外のpolySia構造についてはその存在、機能ともによく分かっていない。近年polySiaを微量検出する方法が開発され、従来考えられていた以上に数多くのpolySia構造が存在することが明らかにされている。とくに、ウニ配偶子は、最近の我々の研究成果から、多様なpolySia構造の宝庫であることが明らかにされている。まず、ウニ卵ゼリーにはα2,5Oglycolyl結合polySia構造をもつ糖タンパク質が見いだされており、近年、この構造が精子に結合して精子細胞内pHを上昇させて精子先体反応を促進することが示された。ごく最近では、polySiaの微量検出法を駆使して、ウニ精子上からはα2,9およびα2,8結合polySiaの存在が明らかにされた。これは、同一細胞上に2つの異なった種類のpolySia構造の存在を示した最初の例である。α2,9結合polySiaをもつタンパク質は、ウニ精子鞭毛に存在する主要Sia含有糖タンパク質flagellasialinである。flagellasialin上のα2,9結合polySiaは、精子細胞内Ca2+濃度および精子運動性の制御に関わると考えられる。すなわち、これらのpolySiaの機能として、細胞間相互作用を制御するというNCAM上のpolySiaの機能とは異なる新機能をもつものと考えられる。この総説ではウニ配偶子上から新たに見つかったpolySiaの構造、機能について最近の知見を述べる。
  • Keiko Kato
    2007 年 19 巻 106 号 p. 99-112
    発行日: 2007/03/02
    公開日: 2008/12/12
    ジャーナル フリー
    神経の可塑的変化は、脳の高次機能の発現と維持に必須の反応であるが、ほとんどの可塑的変化は、いまだ現象論に留まっている。その中において、海馬を中心としたシナプス可塑性については、ずいぶんと分子レベルの解析が進んできており、特定の糖鎖構造が重要な役割を演じていることが明らかとなってきた。そこで本稿では、5種の糖鎖構造に焦点を絞り、シナプス可塑性への関わりについて解説する。
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