Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー
膜マイクロドメインにおける成長因子受容体の制御
Jin-ichi InokuchiKazuya Kabayama
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2008 年 20 巻 116 号 p. 353-371

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抄録

ガングリオシドは EGFR,インスリン受容体(IR), PDGFR, NGFR, FGFR などの様々な成長因子受容体(GFR)を調節することが知られている。培養細胞の培地中にガングリオシドを外因的に添加すると,これら多くの GFR の機能に変化が認められることから,ガングリオシドが受容体機能の制御媒体として働くことは示唆されているが,その分子メカニズムについては解明しなければならない問題が残されている。この 10 年程の間に世界中の多くの研究者が,コレステロールやスフィンゴ糖脂質に富む微小領域である膜マイクロドメイン(脂質ラフト)が成長因子シグナルの適正な仕分けに重要な役割を果たしている事を報告している。本総説において我々はこれまでの研究成果をまとめ,さらにマイクロドメインにおける成長因子受容体のガングリオシド調節機構の新たなコンセプトを提唱したい。また,ガングリオシドと成長因子受容体がどのように病態に関与するのか? という観点から,最近我々が報告した脂肪細胞のインスリン抵抗性がマイクロドメインにおける GM3 によるインスリン受容体とカベオリンの複合体の解離により惹起されるという新しい分子病態像を紹介する。

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© 2008 FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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