Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー
自然免疫系を始動するバクテリア複合糖質の合成と機能研究
Shoichi Kusumoto
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2010 年 22 巻 125 号 p. 107-118

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抄録

細胞エンベロープと呼ばれる表層構造の重要な成分として、多くのバクテリアに広く分布するバクテリア特有の複合糖質リポ多糖(LPS)やペプチドグリカン(PGN)が、高等動物の免疫系を活性化することは古くから知られていた。この興味ある現象を分子的に理解することを目的に、筆者グループが協同研究者たちと協力して行ったLPSの合成と機能研究の概要を紹介する。LPSの活性本体であると言われていたその糖脂質部「リピドA」の構造を推定したのち、その推定構造を化学合成したところ、期待通りに合成化合物はLPSに報告されているすべての生物活性を有することが証明された。合成的に得られる純粋なリピドAとその誘導体を用いることによって、リピドAの作用機構や受容体タンパク質との相互作用の詳しい研究が可能となった。また、PGNについての同様の研究の結果、ムラミルジペプチドがその最少活性構造であることも明らかになった。合成化学的なアプローチに基づくこれらの研究の結果、高分子量のバクテリア複合糖質LPSやPGNの特定の小さな部分構造が特異的な受容体タンパク質に認識されて、自然免疫として知られるようになったわれわれの防御機構を始動することが疑問の余地なく証明された。

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© 2010 FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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