Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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22 巻, 125 号
Special Issue for the 30th Anniversary of The Japanese Society of Carbohydrate Research
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
前書き
ミニレビュー
  • Y. C. Lee
    原稿種別: ミニレビュー
    2010 年 22 巻 125 号 p. 95-106
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    宿主と病原体の相互作用は、多くの場合糖鎖と糖鎖結合タンパク質(GBP)の相互作用を介する。宿主細胞上の糖鎖が病原体のGBPに結合されることもあるし、病原体上の糖鎖が宿主細胞上のGBPに結合される可能性もある。病原体の中には、宿主細胞の防御機構を巧みに利用して、自分たちの生き残りを進めるものもいる。
  • Shoichi Kusumoto
    原稿種別: ミニレビュー
    2010 年 22 巻 125 号 p. 107-118
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    細胞エンベロープと呼ばれる表層構造の重要な成分として、多くのバクテリアに広く分布するバクテリア特有の複合糖質リポ多糖(LPS)やペプチドグリカン(PGN)が、高等動物の免疫系を活性化することは古くから知られていた。この興味ある現象を分子的に理解することを目的に、筆者グループが協同研究者たちと協力して行ったLPSの合成と機能研究の概要を紹介する。LPSの活性本体であると言われていたその糖脂質部「リピドA」の構造を推定したのち、その推定構造を化学合成したところ、期待通りに合成化合物はLPSに報告されているすべての生物活性を有することが証明された。合成的に得られる純粋なリピドAとその誘導体を用いることによって、リピドAの作用機構や受容体タンパク質との相互作用の詳しい研究が可能となった。また、PGNについての同様の研究の結果、ムラミルジペプチドがその最少活性構造であることも明らかになった。合成化学的なアプローチに基づくこれらの研究の結果、高分子量のバクテリア複合糖質LPSやPGNの特定の小さな部分構造が特異的な受容体タンパク質に認識されて、自然免疫として知られるようになったわれわれの防御機構を始動することが疑問の余地なく証明された。
  • Yukishige Ito
    原稿種別: ミニレビュー
    2010 年 22 巻 125 号 p. 119-140
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    糖鎖生物学および糖鎖工学に対する注目は増大している。筆者は主として複合糖質糖鎖の合成と機能解析を目指した研究を行ってきた。このミニレビューでは、過去12年を振り返り、その間の研究を総括したい。代表的なテーマとして、1)アスパラギン結合型糖鎖の合成、2)新規糖タンパク質構造の合成、3)高分子担体を用いる糖鎖合成法、4)糖タンパク質関連化合物の合成における新規手法の開発、 5)糖タンパク質の合成研究、 6) 糖タンパク質プロセシングと品質管理過程の解析、7)糖転移酵素阻害物質の合成、8)生物活性糖脂質の合成、9)結核菌表層構造体の合成と生物活性、を取り上げる。
  • Nobuko Kawasaki, Toshisuke Kawasaki
    原稿種別: ミニレビュー
    2010 年 22 巻 125 号 p. 141-151
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    動物レクチンはヒトや動物に含まれる糖鎖の生理的役割の解明に大きく貢献してきた。マンナン結合タンパク質(MBP)は、その糖鎖認識ドメイン(CRD) に存在する糖結合部位を介してマンノース、N-アセチルグルコサミン、L-フコースに結合する。病原微生物では、細胞表層のマンノオリゴ糖がMBPに結合する主要な糖鎖である。これに対し、内在性の標的であるヒト結腸癌細胞株SW1116の場合、I型のルイス型オリゴ糖鎖がMBPの主要な結合相手となる。すなわち、SW1116細胞の可溶化物オリゴ糖鎖をMBPカラムにかけると、4個以上のFuc(Hex-HexNAc)ユニットをもつ複合型糖鎖(MLO)がカラムに結合するのに対して、3個以下のFuc(Hex-HexNAc)ユニットを持つ複合型糖鎖および高マンース型糖鎖 (Man5 to Man8)はMBPカラムに結合しない。これらの結果は、MLOがこれまで報告のない新規な癌関連糖鎖であることを示している。なぜMLOがこのように高い親和性を示すのか、今後の研究課題であるが、コンピュータモデリングによるとMBPの3量体と Leb-(Lea)x4-Lex糖鎖の間に興味深い複合体の形成が可能なことが示されている。
  • Tamao Endo
    原稿種別: ミニレビュー
    2010 年 22 巻 125 号 p. 152-161
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    生体で作られるタンパク質の多くは糖鎖を含んでいる。糖鎖は糖タンパク質の生物学的な性質や機能に影響を与えることが知られている。糖タンパク質糖鎖は、タンパク質への結合様式によってN-型糖鎖とO-型糖鎖の二つのグループに大別される。本稿では、O-マンノース型糖鎖の構造、生合成、機能、そして病理との関連について概説する。
  • Taeko Miyagi
    原稿種別: ミニレビュー
    2010 年 22 巻 125 号 p. 162-172
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    シアリダーゼは糖蛋白や糖脂質糖鎖末端からα-グリコシド結合シアル酸残基を脱離する糖分解酵素で、糖鎖分解の初期反応を触媒する。動物起源のシアリダーゼは単にリソソームでの異化分解に関わるのみではなく、シアロ複合糖質を修飾することにより、多くの細胞現象を制御していることがわかってきた。これまで、Neu1、Neu2、 Neu3、Neu4と呼ばれる4種の動物シアリダーゼが同定され、性状解析されてきたが、それらは主な細胞内局在や基質特異性等の酵素学的性質が異なっている。事実、各々のシアリダーゼはそれらの性質に応じて、独特の役割を果たしていることが次第にわかってきた。近年、細胞分化、増殖、アポトーシス等の細胞機能に関わっているという証拠が蓄積してきている。本稿ではこれまで明らかになった動物シアリダーゼの生理的・病理的役割について簡単に紹介する。
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