抄録
天然の糖脂質クラスターのように、規則的に配列した多価リガンド集合体は、生体分子認識において重要な役割を果たしている。近年、DNAやペプチド・タンパク質のプログラム化された自己集合により、人工のナノ集合体を構築する技術が発展してきている。この生体分子集合体にリガンドを結合させることにより、多価リガンドを規則的にディスプレイした分子システムを構築できる。糖鎖を結合させたDNAとその半分ずらし相補鎖DNAのハイブリダイゼーションにより、糖鎖を等間隔に一次元ディスプレイすることができる。DNA自己集合によるリガンドの三次元ディスプレイも可能である。一方、ペプチド集合体やウイルスキャプシド表面でのリガンドディスプレイも発展してきている。ウイルスのようなナノカプセル構造をペプチドの自己集合で創製することにも成功している。このような生体分子自己集合を利用したリガンドディスプレイ戦略は、さまざまな生体認識材料やドラッグデリバリー材料に応用可能であろう。