Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Online ISSN : 1883-2113
Print ISSN : 0915-7352
ISSN-L : 0915-7352
ミニレビュー(日本語)
インフルエンザウイルスのシアリダーゼの性状と新しい蛍光検出法
高橋 忠伸
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 27 巻 158 号 p. J49-J60

詳細
抄録

インフルエンザA型ウイルス(IAV)はその表面に二つの糖タンパク質、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)を持っている。HAは、宿主細胞表面に存在する糖鎖末端のシアル酸を受容体として認識する。NAは、糖鎖末端のシアル酸を切断するシアリダーゼ活性を示す。ウイルスのシアリダーゼ活性は、ウイルスのシアル酸結合を防ぐことによって宿主細胞表面からの子孫ウイルスの遊離を促進させる機能が広く知られている。パンデミックIAVのNAには酸性安定性と呼ばれる特有な性質が見られる。この性質は多くの季節性IAVには見られない。この性質は、ウイルス増殖性を促進させる機能を示すことで、新型IAVのパンデミック時の感染拡大に寄与していることが示唆される。最近、ウイルスのシアリダーゼ活性を組織化学的に蛍光可視化できる新規のシアリダーゼ基質が開発された。この基質は、ウイルスのNAを豊富に発現する、生きた状態のIAV感染細胞を短時間で簡単に蛍光可視化できる。本総説は、IAVのシアリダーゼ活性の性状や機能を、主に酸性安定性の観点から述べるとともに、IAVのシアリダーゼ活性の新しい検出ツールについても述べる。

著者関連情報
© 2015 FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
前の記事 次の記事
feedback
Top