Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
糖鎖レクチン工学による幹細胞評価技術の開発と産業展開
舘野 浩章
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2015 年 27 巻 158 号 p. J43-J48

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抄録

ヒト人工多能性幹(iPS)細胞やヒト胚性幹(ES)細胞は再生医療に用いる細胞源として大きな期待が寄せられている。しかし無限の増殖性と多能性を有することから、例え少数でも患者体内に持ち込まれると奇形腫(teratoma)を形成する可能性がある。この課題を解決する糸口として、私はこれまで細胞表面糖鎖に着目して研究を進めてきた。2007年、ヒトiPS細胞が樹立された直後に、さまざまな組織由来のヒトiPS細胞表面糖鎖の網羅解析を行った。その結果、ヒトiPS/ES細胞に共通して存在する糖鎖の構造的特徴を明らかにするとともに、これら多能性幹細胞に特異的に反応するレクチン「rBC2LCN」の発見に至った。本レクチンは産総研で発見した幹細胞検出レクチンの第1号であったことから、AiLecS1とも呼ばれる(以後、rBC2LCN/AiLecS1と呼ぶ)。本発見をもとにヒトiPS/ES細胞を用いた再生医療の最大の課題である腫瘍化の課題を克服する2つの技術を開発した。一つがヒトiPS/ES細胞を培養液で定量測定するための技術であるGlycoStem法であり、もう一つが薬剤を融合させたレクチンを用いてヒトiPS/ES細胞を除く技術である。本レビューでは、rBC2LCN/AiLecS1の発見と、本レクチンの再生医療への実装についてご紹介したい。

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© 2015 FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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