2017 年 29 巻 170 号 p. J61-J68
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は肥満者人口の増加に伴い、世界中で増加している。NAFLDは非進行性の非アルコール性脂肪肝(NAFL)と進行性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に大別される。NASHは肝硬変、肝がんへと進展しうる。そのため、NAFLDからNASHを鑑別することはとても重要である。NASH鑑別診断のためには現時点では肝生検による組織学的評価が必須であり、なかでも肝線維化と風船様肝細胞が最も重要な所見である。これまでにNASH診断に有用性のある様々な臨床検査が報告されてきたが、その診断能は低く、満足できるものはない。医療経済的な面も考慮するとNASHを正確に診断できる単一バイオマーカーの開発が急務である。我々は新たなNASH鑑別バイオマーカーとしてMac-2 binding protein(Mac-2bp)を見出した。さらに、肝生検にて確定診断したNAFLD患者を対象にした検討でMac-2bpがNAFLD患者の肝線維化の予測バイオマーカーであることも見出した。最近、Wisteria floribunda Agglutinin(WFA)陽性Mac-2bp(WFA+-M2BP)がC型慢性肝炎の新規肝線維化バイオマーカーであることが報告され、臨床応用されている。WFA+-M2BPはWFAで認識される糖鎖構造を有したMac-2bpである。このミニレビューではMac-2bpとWFA+-M2BPのNAFLDバイオマーカーとしての有用性について最近の我々の研究を元に概説したい。