Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
細胞機能に関与するインテグリンのN型糖鎖修飾の重要性
伊左治 知弥 顧 建国
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2022 年 34 巻 201 号 p. J91-J95

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抄録

インテグリンは、αβ二量体の細胞外マトリクス受容体である。幅広いリガンド特異性を示し、胚の形態形成、細胞の移動、炎症反応、癌の悪性化、浸潤転移などに深くかかわり、様々な生命現象で機能している。インテグリンはまたN型糖鎖のキャリアとして重要である。このミニレビューでは、インテグリンの機能を制御するN型糖鎖に焦点を絞り概説する。インテグリンにおける糖鎖の重要性は、阻害剤実験、糖転移酵素の過剰発現、ノックダウン、ノックアウトなどによって示されてきた。癌の刺激における特定の刺激によって糖転移酵素が発現誘導される。その結果、糖鎖リモデリングにより、インテグリンの糖鎖は変化し、生体の機能を制御する。インテグリンα5β1のN型糖鎖の修飾の詳細とそれぞれの糖鎖の意義を区別するために、我々の研究グループではN型糖鎖欠損変異体を調製し、機能解析を行ってきた。インテグリンのN型糖鎖は細胞接着のみならず、細胞移動、細胞増殖シグナル、エンドサイトーシス、癌化、悪性化などの細胞固有の機能に関与していることを明らかにした。これらの機能にはインテグリンのバイセクティング、β1,6-N-アセチルグルコサミン分岐および末端のシアリル化修飾が重要である。これらの研究からインテグリンのN型糖鎖修飾は多様な細胞機能に関わることが示唆された。

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© 2022 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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