2023 年 35 巻 205 号 p. J43-J50
リソソームは細胞内外で不要となった核酸、タンパク質、脂質、糖質などの生体高分子の分解を行う細胞内小器官である。内部は酸性に保たれており、約60種類の多種多様な加水分解酵素が存在している。これらのリソソーム酵素をコードする遺伝子や酵素の細胞内輸送に関わるタンパク質をコードする遺伝子に欠損が生じると、基質である代謝物が細胞内に蓄積し、リソソーム蓄積症を発症する。現在、いくつかのリソソーム蓄積症の治療として、最も用いられているのが酵素補充療法である。これは、体外で生産された組換えリソソーム酵素を静脈内投与する方法である。リソソーム酵素の細胞内への取り込みには、マンノース-6-リン酸受容体やマンノース受容体が関与しており、組換えリソソーム酵素のN結合型糖鎖構造が取り込み効率に寄与している。本総説では、リソソーム蓄積症と酵素補充療法について概説し、組換えリソソーム酵素の糖鎖改変の現状について解説をする。