2023 年 35 巻 205 号 p. J38-J42
ポリシアル酸はシアル酸の直鎖状のホモポリマーであり、胎児脳では広く発現しているが、成体脳では神経可塑性の高い限られた領域にしか発現していない。従来、ポリシアル酸はその物理化学的性質から反接着分子と考えられていた。しかし、近年、脳の発達や高次脳機能にかかわる生理活性物質を細胞表面付近で直接結合させ、その作用を包括的に制御していることが明らかになった。また、死後脳の解析や大規模比較ゲノム解析により、ポリシアル酸やその生合成酵素であるST8SIA2と精神疾患との関連性が明らかにされてきている。本稿では、ST8SIA2に見出された様々な一塩基多型(SNPs)のポリシアル酸の生合成及び機能に与える影響について、培養細胞やマウスを用いた生化学的解析の結果を中心に紹介する。