腸管において、ムチンは腸内細菌と宿主を隔てる物理的バリアとして機能する。MUC2ムチンは、高度にO結合型糖鎖修飾を受けた糖タンパク質で、付加する糖鎖はムチンの機能発現に必須の翻訳後修飾である。近年、複雑な構造をもつMUC2糖鎖の特定の構造単位が特有の生理機能を果たすことが見出されつつある。特に、ムチン糖鎖におけるN-アセチルガラクトサミンとガラクトースの硫酸化は、腸管バリア機能に必須の糖鎖構造であることが示された。また、腸内細菌は特定の硫酸基分解酵素を用いることで、ムチン糖鎖を栄養源として利用し、腸へと生着する。一方、腸内細菌は糖転移酵素の発現誘導を介して、宿主の糖鎖修飾を制御する。このように、昨今のムチン糖鎖の構造と機能に関する研究から、ムチンは単に物理的バリアとして機能するのではなく、腸内細菌との複雑な相互作用を制御する分子であることが明らかにされつつある。本稿では、 MUC2ムチンおよびその糖鎖修飾の機能に触れながら、特にムチン糖鎖の硫酸化修飾について解説したい。