抄録
我々の最終目的は医薬品の生産に使うためのヒト適応型糖鎖生産酵母の分子育種である。しかし難易度が高いと考えられたので、サポート的に次のような短・中期テーマを遂行した。
短期テーマでは、ツールの開発を2年程度の期間で実施した。1つはムチン型糖鎖が形成されるための受容配列“ムチンボックス”を発見した。また、もう1つは、糖鎖を糖タンパク質から切り出すと同時に糖鎖をすりかえるTransglycosylation反応を行うEndo Mの遺伝子クローニングに成功した。さらに、組換え酵素の大量調製法を確立し、in vitro 反応でヒト適応型糖鎖生産酵母が作る高マンノース型糖鎖と類似構造を持つRNaseに複合型糖鎖を付加することに成功した。
中期テーマでは、酵母に欠けている糖転移酵素のうち、糖タンパク質の生理活性と密接な相関性をもつGnT-IVの酵素分子と遣伝子の取得した。その結果GnT-IVに遺伝子が2種存在することを見出した。