Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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エンド型グリコシダーゼを利用した二糖単位の転移と縮合
Kazuhide TotaniNozomu YasutakeTakeomi MurataTaichi Usui
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2004 年 16 巻 92 号 p. 383-392

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抄録

エンドグリコシダーゼによる二糖単位の糖鎖の転移と縮合について筆者らの研究を二つ紹介する。最初に、我々は Trichoderma reesei 由来の市販のセルラーゼ粗酵素中に、p-ニトロフェニルβラクトシド (Lacβ-pNP) あるいはラクトサミニド (LacNAcβ-pNP) から、ラクトース (Lac) あるいはN-アセチルラクトサミン (LacNAc) 二糖単位を一度に転移する活性を見いだした。本酵素活性を利用してアルキルβラクトシドなど種々のβ-ラクトシドを合成した。本酵素は、転移反応だけでなく二糖単位とアグリコンの縮合反応も触媒した。1-アルカノール、アルカンジオール、アリルアルコール、グリセロール、Man、Glcなどが二糖単位の受容体となり、アルカノールのアルキル鎖長がC2からC12へと伸びるにつれて転移や縮合の効率は低下した。共存するβ-ガラクトシダーゼの除去により、ラクトースとグリセロールの縮合効率は40%に達した。本酵素を用いた縮合反応により、Lac やLacNAcを有する様々な配糖体の実践的合成が可能となり、人工糖脂質前駆体の新奇合成に道を開いた。粗酵素の精製と加水分解における基質競合試験の結果から、Lac あるいはLacNAc単位の転移と縮合は一種類の酵素によって行われ、それはエンドβ(1-4)-グルカナーゼの一種であることが示唆された。
次の例として、複合糖質糖鎖の構造や生理機能解析に広く用いられている Escherichia freundii 由来のエンド-β-ガラクトシダーゼが、GlcNAcβ1-3Gal二糖単位を位置選択的にGlcNAc残基の4位OH基に転移する活性を有することを紹介する。本酵素の糖転移能を利用することにより、ポリ-N-アセチルラクトサミンの簡便な酵素合成が可能となった。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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