Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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グリコシグナルドメインの構造と機能
Kazuhisa Iwabuchi
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2005 年 17 巻 93 号 p. 1-14

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抄録

スフィンゴ糖脂質は疎水性のセラミドと親水性の糖鎖からなる膜成分である。スフィンゴ糖脂質はスフィンゴミエリンやコレステロールとともに会合して細胞膜上でマイクロドメインを形成している。また、生化学的な分析から、スフィンゴ糖脂質に富んだマイクロドメインには様々な細胞内情報伝達分子、特にSrc family kinaseのような細胞膜に結合する情報伝達分子が含まれていることが明らかとなった。スフィンゴ糖脂質は細胞分化や増殖、細胞接着などの細胞機能と密接に関係していると推測されているが、グライコスフィンゴ糖脂質自身が、細胞機能発現をもたらすような情報伝達を直接仲介するという証拠はほとんど得られていない。グリコシグナルドメイン(GSD)はマウスメラノーマB16細胞、マウス神経芽細胞Neuro2aおよびヒト好中球においてスフィンゴ糖脂質を介した情報伝達ユニットとして同定されている。これらの細胞では、たとえば好中球にはLacCerといった特定のスフィンゴ糖脂質が細胞膜上にたくさん発現されており、Src family kinaseとGSDで会合している。GSDにおいてスフィンゴ糖脂質はリガンドの糖鎖エピトープを特異的に認識し、細胞接着や活性酸素産生などの細胞機能を仲介する。他の種類のマイクロドメインとは異なり、GSDが仲介する細胞機能とそれに関連する情報伝達は、マイクロドメインの構造と機能を壊すことが一般には知られている filipinやmethyl-β-cycrodextrinによって阻害されたり、障害を受けることはない。今後解決すべき課題は如何にしてスフィンゴ糖脂質がGSDにおいて細胞内情報伝達分子に情報を伝えているかである。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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